新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

変わってしまったアメリカ

2018-11-10 09:00:50 | コラム
9日夜のPrime Newsに思う:

昨夜はMLBとNPBとの野球などは避けて、このフジテレビのBSの番組に勉強させて貰っていた。「中間選挙後のアメリカ」との番組名になっていたが、私は出席者の木村太郎、デーブ・スペクター、中林恵美子のお三方が持つ現実的な情報量に期待したのだった。私は普段は「内側から見たアメリカ」などと称して偉そうなことを言って経験を語っているが、アメリカの会社を離れて間もなく25年にもなるし、健康上も理由もあって12年10月にアメリカに行ったのが最後という状況で、最早最新のアメリカの事情には疎いのである。

特に木村太郎などは早くからトランプ候補の当選を予言していた数少ないジャーナリストの一人だったし、豊富な経験と情報入手の速さに注目してきた。デーブ・スペクターについては嫌悪される方も多いと思うが、私はアメリカ人としての彼が持つ、言わば裏事情に近いような現実的な情報には捨てがたいものがあると思っている。昨夜は控えていたが、達者な日本語を駆使したアメリカ式ユーモアは、恐らく悪い冗談に聞こえて嫌っておられる方がおられるのは十分に理解できる。

早稲田大学の中林教授も流石に10年も上院に勤めておられただけあって、豊富な人脈も駆使した最新の情報を持っておられるので、聞くべきところが多いと思って評価している。と言うよりも「内側からアメリカの国会を見てこられた経験」が貴重だと思うので、私は大学の教授という範疇よりも「アメリカ問題の専門家」だと思って聞いている。

お三方はいくつかの結論に導かれていたが、その中でも矢張り「中間選挙の結果はトランプ大統領が眠そうな顔で翌日の記者会見で豪語されたように、共和党の勝利だった」とされた辺りに興味を惹かれた。中林教授も指摘されていたが、トランプ大統領は選挙の終盤では上院で共和党候補が苦戦気味の州のみを強行日程で巡回して演説を続けられたのは「上院を抑えておけば、上院に任命権がある閣僚等を指名できることに加えて、従来から言われている岩盤の支持層があれば、2020年の再選が確保できるから」という作戦だったのも、巧妙であったと思わせてくれた。

しかも、トランプ大統領は移民の流入に厳しい姿勢を採り続けておられながら、増大しつつある嘗ての(?)の少数民族だったヒスパニックとアジア系が多いプーアホワイト以下の層の支持を確保することに大いに意を用いておられたのも、最初からそういう作戦であったか否かは私如きには不明だが、巧みな戦法だったと思わせてくれた。この点もお三方が指摘された重要なポイントだろう。

私は長年共和党支持(オウナーファミリーのCEOジョージ・ウエアーハウザーはブッシュ大統領(父)とイエール大学の同級生であり親交がある間柄だったので、在職中から民主党にはほとんど関心がなかった。それだけに止まらず、クリントン政権下では明らかに誤った政策である「日本がアメリカから製紙の原料のみを輸入して、世界最高の品質を誇る最終製品である紙類を輸入を増やさなければスーパー301条を適用する」などと脅迫してきていたので、益々印象が悪かったのだ。

そこで、昨夜の討論では「右派の政治家であるトランプ大統領に対抗上も民主党内ではリベラル派というか左寄りの勢力が中心となってしまってきた。しかも、民主党内には次期大統領選挙に向けての有力な候補者がおらず、第二のオバマと言われたオルーク氏も落選するなど人材難である点が弱みである」との解説があった。確かに、画面に映し出された候補となりそうな人物たちも70歳台後半と高齢化しているか、無名過ぎる者ばかりだった。

ここまでを聞いていると「アメリカでは共和党がトランプ大統領を中心に右傾した政党となって行く傾向が濃厚で、対する民主党はそんどんとリベラル化して行っている」そうなのである。と言うことは、ここでもアメリカの二分列化が明らかになったということだ。しかも、トランプ大統領以前は民主党支持だったはずの言わば非インテリ階級というか労働者層が「トランプ大統領は孤立の関税を掛けて輸入を減らして自分たちを助けてくれた上で“job”(何度でも言うが、これを「雇用」と訳すマスコミはミスリーディングである)を増やしてくれた」と言って共和党支持に回ったと言える由だった。

私にはトランプ大統領が何処までそういう意図があって採った政策かは解る訳もないが「アメリカが分裂しつつある」という見方の背景にはそういう傾向があったのかとあらためて聞かされたのだった。私はアメリカが変わって行きつつあることは理解できたが、その変化をトランプ大統領が意図してもたらしのか、アメリカ国民(と言うか各州民)が変わって行ったのかは解らない。トランプ政治は確かに成功しつつあるかの如きだが、依然として好景気が続いているのはオバマの遺産であるとの見方は消えていないとも聞かされた。

木村太郎は「トランプ大統領はその公約の全てを実現させてきたが、未だに未遂なのがメキシコとの国境の壁とオバマケアであると指摘していた。だが、最初は「日本が不公平な貿易を続けていることの是正」と言ったが、直後に2項目に変えてしまった。トランプ大統領は日本から“millions of cars”(数百万台と言えば良いか)が輸入されていながら、アメリカ産の車を輸入しない」と言っておられたのは誤りだが、恐らく実態はご存じではなくて言われているのだとの指摘があった

デーブ・スペクターは「トランプ大統領は(実態を)知らないのだろうが、知らせようと思っても聞かないだろう」と言っていたのには私は同感だった。だが、スペクターのかかるアメリカ式ユーモアの類いの発言は「不謹慎」だと聞いて嫌われる方は多いだろうと思う。

このような次第で、昨夜は自分の州内でのことしか知らないし、知ろうと努力もしないアメリカ市民になったような感覚で、元アメリカの会社員は興味を持って専門家が語るアメリカの最新の現状分析の話を聞いていた。新鮮だったし、大いに勉強になった。ここまでを全部英語にするのは大変だが、何とか訳して昔の同僚に送って意見を聞いてみたい気がするが、一寸重荷か。