新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

11月23日 その2 カルロス・ゴーン氏を離れて軽い話題を

2018-11-23 11:01:25 | コラム
読売巨人軍の常套手段:

野球シーズンが終わってトレードだの何のと騒がしくなってきた。その中でも私には目立つのが、監督が原辰徳に替わった読売のやり口だ。お気付きの方がおられるだろうが、この球団は他のテイームでFA宣言したある程度以上の実績があって年齢を考慮しても未だ使えそうな者や、今シーズンに苦しめられた外国人選手などを好条件を提示して引き抜いてしまうのである。これを来年の備えての強化策などと甘い見方をしてはならないのだ。

これは見方にもよるが、極めてアメリカ式のやり方で「他社(他球団でも同じだが)に行って大活躍される危険性があれば、自社で採用して活用するか、場合によっては飼い殺しにしても良い」という人事作戦なのである。私は実際にそういう例を見てきた。

そういう視点で見れば、読売巨人軍がこれまでに何名の他球団のFA宣言をした選手を獲得してきたかをお考え願いたい。その連中の中で二軍乃至は補欠扱いされてきた者がどれほどいたかである。今年の最悪の例では、中日でホームラン王となったゲレーロに4億円という好条件を提示して獲ってきたまでは良かったが、彼を何試合先発メンバーで使ったかということだ。前年並みのホームランを打ったかということ。

ただ今は広島の三連覇の立役者の一人である丸佳浩に対して働きかけて、ロッテと条件で争っている。勿論、丸君は優秀な打者だし守備にも優れているが、セントラル・リーグの他球団に行かれては困るという意向で好条件を提示したので、今やパシフィック・リーグのロッテだけが競争相手で残ったのだと私は見ている。だが、読売には今何名の外野手がいるかを考えて見ろと言うこと。彼らはそれに飽き足らず、今度はオリックスを出てアメリカ帰りの中島宏之(3億5千万円)を獲ってきたのだ。衰えが見える中島を内野の何処で使うというのか?

私は読売のこう言うやり方が嫌いなのだが、一度読売に在籍すれば年俸も高いし、辞めた後も色々と第二の生活を援助している例が多いので、惹かれるものが多いのだと思っている。という次第で、丸君が読売の甘言に乗せられそうだと懸念するのだ。あーあ。


USTRのカーラ・ヒルズ大使は指摘した

2018-11-23 07:28:39 | コラム
大使は「それでも買わない日本が悪い」と指摘した:

以下は昨年の1月8日に発表したものだが、説明不足な点などがあったので、敢えて加筆・訂正してみた次第。トランプ大統領の残された公約の中に「対日貿易赤字削減」がある以上、大いに関連がある話題だと思っている。

私はこれまでに何度も1994年7月にNHKホールで開催されたパネル・デイスカションでの同大使の発言を紹介してきた。大使はアメリカの対日輸出が何故伸びないかの原因の根本的な点を躊躇なく認める発言をされた。長年対日輸出を担当してきた者の1人としては「善くも言ったものだ」と寧ろ感心していたくらいだった。

その内容はと言えば

*「アメリカは識字率を上げる必要がある」、

*「初等教育の充実を図らねばならない」

というものだった。その意味するところは、

「アメリカの生産現場には非常に良く整備されたそこに働く労働組合員の為のマニュアルが準備されている。だが、組合員がそれを読んで理解しなければ何の効果も挙がらないのだ。しかも、現実には外国人も含めた組合員の中にはそれを読めない者がいるのが現実なのである。それも問題だが、それよりも悪いのが読んだ振りをする者がいることだ」

なのである。

私は現実に工場に入って彼らと語り合ってたどたどしい英語しか話せない移民の組合員がいたと解っていたので、ヒルズ大使が言われたことは遺憾ながら『仰せの通りである』と良く解る」のだった。

だが、大使は「それでも、買わない日本が悪い」と平然と締めくくられたのには恐れ入った。「流石にアメリカの大使だ。何処まで行っても負けないのだ」と思わせられた。

それは、「原因がアメリカの製品の品質が(飽くまでも一般論として重要な点で)日本的な水準からすれば劣っているので伸びないのだ」と認めたのだから重要なのだ。その劣っていることの原因が「自国の労働力の質にあると認識している」と認める発言なのだから、アメリカの労働市場の実態をご存じでない向きには、何のことか解らなかっただろうと、その場で聴いていた私には考えさせてくれたのだった。

ここまで言っても未だ何のことかがお解りにならない方はおられるのではないかと危惧する。即ち、アメリカの国内市場で受け入れられている品質では(お断りしておくが紙パルプ産業界のことを云々しているのではない)世界の市場、就中我が国では通用しないという、悲しくも冷厳な事実なのである。しかし世界最大の経済大国と自他共に許したアメリカでは、メーカーも最終需要者も「我が国の製品こそ世界最高である」と過信している状態で、言うなれば井の中の蛙の集団なのである。

世間では古くから「セラーズ・マーケット」と「バイヤーズ・マーケット」という言い方がある。だが、アメリカでは「セラー」はおらず「プロデユーサー」だけがいると言っても良い状況なのだ。具体的な例を挙げればアメリカの紙パルプメーカーは一般的にユーザーに直売するのが普通であり、我が国のように代理店があってその次に卸商がいて需要家に販売するというような流通経路はないのである。言って見れば「プロデユーサーズ・マーケット」なのである。その連中は自分たちの生産効率を最大限に発揮することが可能なスペック(specifications)を設定し、ひたすら大量生産に励むのだった。そのスペックには市場と最終消費者が求める要素は最小限度にしか考慮されていないと思っていて誤りではないのだ。生産効率を追求する以上は。その辺りを英語では”product out”などと表現されている。

仮令そうであっても、そのスペックの下に製造する現場の労働力の質が望ましくなければ、イヤ世界の平均的水準以上でなければ、世界市場での競合能力は低下するのだ。世界の諸国の技術水準と生活水準がアメリカ以下だった頃には、アメリカは世界に冠たる技術を誇る製造業の王国であり、その高水準にある研究開発(R&D)能力とその資本力によって世界を圧倒してきたのだった。紙パルプ産業界だけを見ても、アメリカの大手メーカーが降ろしたライセンスを使用しているメーカーは、それは驚くほど多かった。しかしながら、アメリカが同じ水準に止まっている間に、世界の諸国は多くの面でアメリカを抜き去っていたのだった。

その辺りと言うか、アメリカがR&Dの能力の凄さは何もW社に転進する前から十分に認識させられてはいた。だが、紙パルプ・林産物業界の世界的大手である自社の巨大なテクノロジー・センターを現実に見て、そこに投入されている豊富なPh.D.ばかりの人材と資金には圧倒されたのだった。同時に一般論として「アメリカのR&Dの能力が世界最高であることは認めるにしても、そこで産み出された革新的な技術やアイデイアを商業生産に移行した場面での労働力の質が伴わず、競合国や後発の諸国に追い抜かれてしまう結果になってしまうのが、悲しくも冷厳な事実なのだと知った時はアメリカの会社の一員としては悲しかった。

私は日本市場という世界でも最も品質に対する要求が細か過ぎるし且つ厳格な国を相手にして、全く予期せざる苦労を強いられたのだった。簡単に言えば、アメリカでは我が国で当たり前のように達成されてきたごく当たり前のことである受け入れ基準を満たすことが出来ていない紙が市場では大手を振って通用しているという、何とも言いようがない現実があった。それにも拘わらず、クリントン政権は「原料だけ買うな。アメリかでは世界最高の紙を造っている。サー買え。買わないとスーパー301条を発動するぞ」と脅しにかかったのだから救いようがなかった。ヒルズ大使は一般論としてその誤認識をご存じだったと理解して聴いていた。

それでも、当時「猛女」などと酷評したメデイアもあったほどで、大使は自分の職務に忠実に我が国に向かって「もっと輸入せよ、世界最高のアメリカ製品を買え」と迫っておられただけだと理解していた。私はトヨタを始めとする自動車メーカーがメキシコに生産拠点を設けようとする根拠が果たして労務費だけの問題なのか否かなどを知る由もないが、トランプ次期大統領はこれからカーラ・ヒルズ元大使にでもブリーフィングして貰ってアメリカの労働力の問題をおさらいする必要があるのではないかと危惧するのだ。

もしも、何らの予備知識もなくあの類いの発言をしておられたのであれば、アメリカ国民の中には「オバマ大統領に続いて、大変な人物を選んでしまった結果になるのではないか」と密かに恐れている人たちもいるのかも知れないと思う。これから先にトランプ新大統領が如何なる対日輸出政策乃至は貿易赤字削減策を打ち出してこられるかを思う時に、正直な所、我が国にとっては難しい時期がやってくると思わざるを得ない。我が国にとっての課題は如何にしてトランプ大統領に「アメリカの労働力の質の問題が今日の貿易赤字を生む原因になっているかを十分にご理解願うことだろう。だが、トランプ大統領は引かないと危惧する。