読書。
『クォンタム・ファミリーズ』 東浩紀
を読んだ。
思想家である東浩紀さんの初めての単独長編小説であるのが今作です。
『クォンタム・ファミリーズ』を日本語にすると『量子家族』となり、
そこから「SFものだな」という予感がします。
そして読んでみると、実に面白くひきこまれて読んでしまう良作でした。
ちょっと書いただけでもネタばれしてしまうので、
なかなか感想を書けませんが、
まず、読むにあたっての助言みたいなものを書いておきます。
『クォンタム・ファミリーズ』を読むには、
量子論のちょっとした知識と、
ドストエフスキーの著書(五大長編以外も)を読んだことがあることと、
村上春樹もけっこう読んでることが助けになるかなぁと思います。
さらにはフィリップ・K・ディックについても言及があるので、
彼の作品も知っているといいのかもしれない。
それと、僕なんかは鈴木光司さんの「リング」「らせん」「ループ」のうち、
「ループ」を読んだことがあったので、
そのせいで物語が掴みやすかったというのがあります。
最初の「物語外」とされるところを読んだ時には、
なんだか生焼けの肉を食べるようなことになるのかな、と
うっすらと危惧を感じたものですが、
物語にはいると、その文章力の水準の高さによって
信頼して(そして勉強にもなって)読み進めることになりました。
とはいえ、量子論からくる未来の科学云々の記述は難しく、
その専門性と虚構とでの構築ぶりには拍手を贈る気分になりながらも、
「わかりにくい」「わからない」という部分を含めて、
やっと話についていけました。
また、暴力の思想の展開に関しては、
虚構だからこそ楽しめるのは当たり前なんだけれども、
作者は思想家でもあるので、暴力関係の正当性を謳うところに
思想が真面目に込められていたらちょっと引くなぁと思いつつ、
だけど、そこに作者の主体はなく(腰を据えているわけではないという意味)
論理だけなんだろうなぁとも思うわけです。
ところどころで村上春樹さんを意識した個所が見られますが、
部分によっては村上龍さんを思い起こさせるような迫力あるシーンがあり、
ドストエフスキーを彷彿とさせるような思想の告白があり、
純文学的な性に関する問題の部分があり、
大衆文学のようなエンタテイメント性もあり、
そしてSF小説で、
これは良くいうわけでも悪くいうわけでもないのですが、
「小説全般が生んだ、出来のいい子ども」
のような印象を持ちました。
それだけ、いろいろな過去作品なんかへのオマージュ的でもあり、
その優れた頭脳を十分に機能させたことを感じさせる、作者の傑物感もあります。
といっても、誤解のないように言いますが、オリジナル性は高いでしょう。
暴力ってけっこう書くのに心理的コストが高いような気がするんですが、
東さんって、ジャーナリストの津田大介さんにツイッターで、
「三国志の人物にたとえると呂布」と言われただけあって、
あらぶるものを内に抱えていてなおかつ無双の才能を持っているのかなぁと思わせられ、
本物の呂布のように裏切りを繰り返すのならいやだけれど、
この前のSTAP細胞問題でも、ツイッターで早い段階から懐疑の目を向け、
舌鋒鋭く批判されていたので、
そのあたりが呂布なのかもしれないなぁと思ったりもしました。
また、ニヒリズムのように思える個所もあるんですが、
そのあたり、作者の東さんってどうなんでしょう。
そんなわけで、スター・トレックは好きですが、
SF小説ってあんまり読んだことがなかったので、
そういうのもあるかもしれないですが、すごいもんだなって感銘を受けました。
解説書いておられる筒井康隆さんの『時をかける少女』が僕は好きでした。
それと同じくらい、心に残り、頭を刺激されるような作品でした。
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『クォンタム・ファミリーズ』 東浩紀
を読んだ。
思想家である東浩紀さんの初めての単独長編小説であるのが今作です。
『クォンタム・ファミリーズ』を日本語にすると『量子家族』となり、
そこから「SFものだな」という予感がします。
そして読んでみると、実に面白くひきこまれて読んでしまう良作でした。
ちょっと書いただけでもネタばれしてしまうので、
なかなか感想を書けませんが、
まず、読むにあたっての助言みたいなものを書いておきます。
『クォンタム・ファミリーズ』を読むには、
量子論のちょっとした知識と、
ドストエフスキーの著書(五大長編以外も)を読んだことがあることと、
村上春樹もけっこう読んでることが助けになるかなぁと思います。
さらにはフィリップ・K・ディックについても言及があるので、
彼の作品も知っているといいのかもしれない。
それと、僕なんかは鈴木光司さんの「リング」「らせん」「ループ」のうち、
「ループ」を読んだことがあったので、
そのせいで物語が掴みやすかったというのがあります。
最初の「物語外」とされるところを読んだ時には、
なんだか生焼けの肉を食べるようなことになるのかな、と
うっすらと危惧を感じたものですが、
物語にはいると、その文章力の水準の高さによって
信頼して(そして勉強にもなって)読み進めることになりました。
とはいえ、量子論からくる未来の科学云々の記述は難しく、
その専門性と虚構とでの構築ぶりには拍手を贈る気分になりながらも、
「わかりにくい」「わからない」という部分を含めて、
やっと話についていけました。
また、暴力の思想の展開に関しては、
虚構だからこそ楽しめるのは当たり前なんだけれども、
作者は思想家でもあるので、暴力関係の正当性を謳うところに
思想が真面目に込められていたらちょっと引くなぁと思いつつ、
だけど、そこに作者の主体はなく(腰を据えているわけではないという意味)
論理だけなんだろうなぁとも思うわけです。
ところどころで村上春樹さんを意識した個所が見られますが、
部分によっては村上龍さんを思い起こさせるような迫力あるシーンがあり、
ドストエフスキーを彷彿とさせるような思想の告白があり、
純文学的な性に関する問題の部分があり、
大衆文学のようなエンタテイメント性もあり、
そしてSF小説で、
これは良くいうわけでも悪くいうわけでもないのですが、
「小説全般が生んだ、出来のいい子ども」
のような印象を持ちました。
それだけ、いろいろな過去作品なんかへのオマージュ的でもあり、
その優れた頭脳を十分に機能させたことを感じさせる、作者の傑物感もあります。
といっても、誤解のないように言いますが、オリジナル性は高いでしょう。
暴力ってけっこう書くのに心理的コストが高いような気がするんですが、
東さんって、ジャーナリストの津田大介さんにツイッターで、
「三国志の人物にたとえると呂布」と言われただけあって、
あらぶるものを内に抱えていてなおかつ無双の才能を持っているのかなぁと思わせられ、
本物の呂布のように裏切りを繰り返すのならいやだけれど、
この前のSTAP細胞問題でも、ツイッターで早い段階から懐疑の目を向け、
舌鋒鋭く批判されていたので、
そのあたりが呂布なのかもしれないなぁと思ったりもしました。
また、ニヒリズムのように思える個所もあるんですが、
そのあたり、作者の東さんってどうなんでしょう。
そんなわけで、スター・トレックは好きですが、
SF小説ってあんまり読んだことがなかったので、
そういうのもあるかもしれないですが、すごいもんだなって感銘を受けました。
解説書いておられる筒井康隆さんの『時をかける少女』が僕は好きでした。
それと同じくらい、心に残り、頭を刺激されるような作品でした。
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