Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『点滴ポール 生き抜くという旗印』

2014-07-20 00:39:42 | 読書。
読書。
『点滴ポール 生き抜くという旗印』 岩崎航 写真:斎藤陽道
を読んだ。

詩集です。
著者の岩崎航さんは1976年生まれで、3歳の時に筋ジストロフィーを発症し、
今は人工呼吸器をつけ胃瘻(いろう)で食事をとるという生活をされているそうです。
胃瘻とは、本書の注釈によると、「口から食事がとれない人、または充分にとれない人の
栄養確保のために、腹壁を切開して胃内に管を通して作られた、
お腹の小さな穴のこと。またそれに取り付けた器具」です。

そんな岩崎さんの闘病の記録でもある5行詩集なのですが、
そこから読み取れる気構えというか、姿勢ですね、それが素晴らしい。
繊細ななかに強さもあり、静かな言葉を落ち着いたトーンで使って、
短い5行詩でもって表現する。
そしてその訴えかけてくる力、というか、
彼の詩に触れることで、読み手である自分のこころが震えてくるような、
温かくなるような感じがしてくる。まるで共振を起こすかのように。
といいつつ、うまく紹介できていないなぁと苦笑してる僕です。

3つほど、引用紹介させてください。

_______

誰もがある

いのちの奥底の

燠火(おきび)は吹き消せない

消えたと思うのは

こころの 錯覚

_______

ほっとくと

どんどん冷える

世の中だから

それぞれが灯り

点して生きる

_______

暮らしを楽しむ

楽しもうとする

そのこころが

とても大事だということを

知った

_______


もっともっと読んでほしいのですが、
そこは本書を手にとって、ゆっくりとしっかりと彼のメッセージを
受け取ってほしいです。

僕とはほぼ同世代の岩崎さん。
生に対するベクトルがはっきりしていて、
見習わなきゃと思いました。
いっとき、自殺すら考えたことがあるといいます。
そして、20代のうちの4年間には吐き気に苦しんだ時期もあったそうです。
そうやって地獄を見てきたからこそ、
生の輝きを痛いほどわかっている方なのかもしれない。
なにかきっと、根源的な人間の生の力ってものがあって、
それを意識の上で掴んでいるのが岩崎さんだという気がする。

この本に出会えたのはよかったなぁと思いました。
病身の人の詩だからなんていうのに代表される偏見は
吹き飛んでしまえばいいです。
こういう輝きはもっと多くの人に知ってほしいです。
目の曇っていない人はこういう人なんだって、読むとわかります。



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