Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

終戦記念日ノ前ニ

2007-08-10 17:44:13 | days
原爆の日も過ぎ、終戦記念日も間近にせまったこの期間、
こうの史代の漫画『夕凪の街 桜の国』を読み、元ちとせの『死んだ女の子』を聴いた。
どちらも広島の原爆をモチーフにした作品。
『夕凪の街 桜の国』のほうは、落ち着いて丁寧に語られる原爆後の世界の、
リセットされることのないせつない悲しみ、断ち切れてはならない過去と現在の
つながりみたいなものを描いていると思う。罪もない人々を襲った暴力、
それをもたらした戦争をその後の世界から間接的に静かに語っているように読めた。
『死んだ女の子』は、原爆で死んだ女の子がそのやるせなさゆえに幽霊になって
家の戸を叩き、無念を訴えかける歌。罪もない子供が圧倒的な暴力によって、
酷い死に方をしたことを、その当人の言葉として人々に伝え、
忘れてはならないというメッセージを送る。
銃も爆弾も、大量殺戮兵器である原爆も、その目的は人間を殺すことにある。
平静の世においては大きな罪に問われるが、戦争時にはその責任が
無視されてしまう殺人のための道具だ。
一人の人間として個々が死へ感じることといえば、深い悲しみであるはずなのに、
相反して「人の死」を目的とする兵器が使用される。
戦争は、想像力の欠如を人間にもたらすものではないでしょうか。
人が死ぬ苦しみや関係者の悲しみをまともに考えていたら殺し合いはできない。
本当はそういうことを考えてしかるべきなのに、
国家の方針という上位概念とされるものに、暗黙のうちに包み隠されてしまう。
もちろん、テロもそう。
あーあ、いつか、本当に平和な世界がこないかなと考えてしまう。
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