長谷川英祐 「働かないアリに意義がある 」読了
ぼくのようなサラリーマンにはなんとも心強いというか、僕みたいな人間がいてもいいのだよと思えるタイトルだったので手にとってみた。
アリやハチの巣の中には約2割の働かない個体がいるらしい。ある瞬間ではなんと7割のアリは何もしていない。
この本はそれらの個体はコロニーを維持するためにおいてなぜ必要なのかということと、アリやハチというのは誰でも知っているとおり、女王がいて、その子供の働きアリや働きバチが全体でひとつの社会生活を営んでいるけれども、どうして彼らは自分の子供を作らずに女王の子供をせっせと世話するのかということを、遺伝の法則の見地から解説している。タイトルは「働かないアリ・・・」であるけれども、後者の解説のほうがはるかに多くなっている。
しかし今回は働かないアリについてのみ感想を書いてみたいと思う。
働かないアリであるけれども、実は彼らもちゃんと働くことがある。それは巣の中の仕事がすごく忙しくなってきたときだそうだ。例えばエサや蜜が大量に見つかったり、巣の温度がすごく高くなったときに働き者のアリだけではまかないきれなくなると遅れて仕事に参加するらしい。個体によって仕事に対する反応閾値がちがうようにできているのだ。そうすることによって巣の中を効率的に運営しているらしい。ホコリを見たらすぐに掃除をしたくなる人と、全然気にならない人がいるのと同じことだ。
そうしないでみんな一斉に仕事にとりかかってしまうと、いざというときにすべての仕事をやりきれなくて破滅の危機に陥ってしまう。そんなセーフティネットのような役割を果たしているのが働かない連中らしい。どうも僕が思っていたのとは違って働かないのではなくていざというときのために待機をしているのだった。だめだ、僕の方がアリ以下になってしまう。
そして、みんな女王の子供で同じ遺伝子を持っているはずなのにどうしてそんな仕事に対する閾値の違いが出るかというと、女王は最初の交尾をするときに複数(20匹くらい)のオスと交わるそうだ。そこで閾値の違いが遺伝として働きアリに伝えられるらしい。
僕の父ちゃんはきっと実は低い閾値の人だったのかもしれない。
しかし、巣の中にはもっと強烈なやつがいて、本当に何もしないアリもいるらしい。これをチーターと呼ぶそうだ。英語で「cheat」という単語は「だます」と訳される。そこからの名前だそうだが、彼らの存在意義というのは何もない。“社会”というものができるところでは必ず裏切り者ができる。それは利他的な社会ではそれを自分のためだけに利用しようという輩が生まれてくるという必定があるいうのだ。だから社会をだましているやつらということになる。
ただ、彼らにも様々な運命が待っている。美味しい汁だけ吸っているやつらはどんどん増殖することができる。しかし、増えすぎると宿主を滅ぼしてしまう。だから増殖力のあるチーターは滅び、うまく社会をだまし続けるチーターだけが生き残り、社会全体としては存続することができる。すなわち僕のような“会社の寄生虫”は少ないほどよい。他の人にはばれずに寄生し続けるのにも苦労がいるのだ。
個が立ちすぎれば群れもろとも滅び、他者のために尽くせば裏切り者に出し抜かれる。「群れ」の甘い蜜を一度吸ってしまうと真に面倒くさい。「群れか個か」という問題から逃れるすべはない。
さらにそれに折り合いをつけることは神を目指す行為だと・・・。そしてそのような効率だけを求めるのではなく寄生虫のような無駄を愛することこそ人間らしいとこの本は締めくくられている。
僕のようなアリがいてもいいのだと思うと少しホッとする1冊であった。
ぼくのようなサラリーマンにはなんとも心強いというか、僕みたいな人間がいてもいいのだよと思えるタイトルだったので手にとってみた。
アリやハチの巣の中には約2割の働かない個体がいるらしい。ある瞬間ではなんと7割のアリは何もしていない。
この本はそれらの個体はコロニーを維持するためにおいてなぜ必要なのかということと、アリやハチというのは誰でも知っているとおり、女王がいて、その子供の働きアリや働きバチが全体でひとつの社会生活を営んでいるけれども、どうして彼らは自分の子供を作らずに女王の子供をせっせと世話するのかということを、遺伝の法則の見地から解説している。タイトルは「働かないアリ・・・」であるけれども、後者の解説のほうがはるかに多くなっている。
しかし今回は働かないアリについてのみ感想を書いてみたいと思う。
働かないアリであるけれども、実は彼らもちゃんと働くことがある。それは巣の中の仕事がすごく忙しくなってきたときだそうだ。例えばエサや蜜が大量に見つかったり、巣の温度がすごく高くなったときに働き者のアリだけではまかないきれなくなると遅れて仕事に参加するらしい。個体によって仕事に対する反応閾値がちがうようにできているのだ。そうすることによって巣の中を効率的に運営しているらしい。ホコリを見たらすぐに掃除をしたくなる人と、全然気にならない人がいるのと同じことだ。
そうしないでみんな一斉に仕事にとりかかってしまうと、いざというときにすべての仕事をやりきれなくて破滅の危機に陥ってしまう。そんなセーフティネットのような役割を果たしているのが働かない連中らしい。どうも僕が思っていたのとは違って働かないのではなくていざというときのために待機をしているのだった。だめだ、僕の方がアリ以下になってしまう。
そして、みんな女王の子供で同じ遺伝子を持っているはずなのにどうしてそんな仕事に対する閾値の違いが出るかというと、女王は最初の交尾をするときに複数(20匹くらい)のオスと交わるそうだ。そこで閾値の違いが遺伝として働きアリに伝えられるらしい。
僕の父ちゃんはきっと実は低い閾値の人だったのかもしれない。
しかし、巣の中にはもっと強烈なやつがいて、本当に何もしないアリもいるらしい。これをチーターと呼ぶそうだ。英語で「cheat」という単語は「だます」と訳される。そこからの名前だそうだが、彼らの存在意義というのは何もない。“社会”というものができるところでは必ず裏切り者ができる。それは利他的な社会ではそれを自分のためだけに利用しようという輩が生まれてくるという必定があるいうのだ。だから社会をだましているやつらということになる。
ただ、彼らにも様々な運命が待っている。美味しい汁だけ吸っているやつらはどんどん増殖することができる。しかし、増えすぎると宿主を滅ぼしてしまう。だから増殖力のあるチーターは滅び、うまく社会をだまし続けるチーターだけが生き残り、社会全体としては存続することができる。すなわち僕のような“会社の寄生虫”は少ないほどよい。他の人にはばれずに寄生し続けるのにも苦労がいるのだ。
個が立ちすぎれば群れもろとも滅び、他者のために尽くせば裏切り者に出し抜かれる。「群れ」の甘い蜜を一度吸ってしまうと真に面倒くさい。「群れか個か」という問題から逃れるすべはない。
さらにそれに折り合いをつけることは神を目指す行為だと・・・。そしてそのような効率だけを求めるのではなく寄生虫のような無駄を愛することこそ人間らしいとこの本は締めくくられている。
僕のようなアリがいてもいいのだと思うと少しホッとする1冊であった。