イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「逆境を楽しむ力 心の琴線にアプローチする岩出式「人を動かす心理術」の極意」読了

2022年09月12日 | 2022読書
岩出雅之 「逆境を楽しむ力 心の琴線にアプローチする岩出式「人を動かす心理術」の極意」読了

今さら組織論を読んでも何の意味もないのだが、逆境ではなくても辺境にいるのは間違いがなく、そこで耐え抜く方法でも見つけてみようかと読んでみた。

著者や帝京大学ラグビー部の監督をしていた人だそうだ。和歌山県出身だということも、とりあえず読んでみようかと思った動機である。

逆境とはあまり関係がないが、組織を機能的に動かすには、「心理的安全性」と「野心的目標」というものが重要だそうだ。「心理的安全性」とは、「組織内で誰もが、拒絶されたり罰せられたりする心配をせずに忌憚のない意見を述べられる状態のこと。」をいい、野心的な目標を協働するのに有益であると考えられている。
心理的安全性が高くても野心的な目標がなければただの仲良しグループになってしまい、逆だとギスギスした組織になる。

考えてみると、いままでの職場で、心理的安全性というものを感じたことがなかった。特に直近の職場はいつも誰かが誰かの悪口を言っているというようなところだった。悪口を言っている連中の中には僕も含まれているわけだが、そういう自分が嫌でひとり黙ってしまう。働かないおじさんは人と口を利かないというが本当だなと思ったものだ。
野心的目標はどうだろう。衰退産業である業界で前年プラスの売り上げ予算を渡されても最初からあきらめるしかない。そんなことを30年以上も続けてきた。そしてそういうことが体中に染みついてしまったように思う。

「利他の精神」「自己実現」「内発的動機」「セルフエフィカシー」「成長マインドセット」・・、様々な前向きな言葉が盛られているが、僕にとっては過去の言葉であり、これか先もまったく縁のない言葉だ。そういった言葉にずっと縁がなかったのは、きっと職場環境がそうさせたのだろうと思ったりもしたのだが、著者の経験を読んでみるとそうでもなさそうだ。著者は順風満帆に強豪チームの監督になったのではなかったそうだ。実家の破産を経験し、高校ラグビー部の監督になれたのは大学を卒業して10年経ってからだそうだ。そんな境遇にもめげず、やっと大学ラグビー部の監督となり、大学ラグビー選手権で10回の優勝をするまでになった。
ずっと前向きに生きられるというのは、それはもう、DNAしかないのではないのかと思った。そう考えられる人はそう考えられるし、そう考えられない人は死ぬまでそんな気持ちにはなれない。事実、僕がそうだ。

『世の中に不満を持ったりする人の多くは、他人との比較や組織との関係性がうまくいかないことに端を発しています。まずは自分ではコントロールできない他社や世間、組織ではなく、自分自身のことをちゃんと整えていくことに専念してほしい。現在と過去を振り返り、未来の目標に照らしながら、失敗した自分を覆し、整えて肯定化していく。』それだけでまったく違った人生になるはずだというが、そんなようには絶対に思うことはできない。自分のふがいなさをすべて他人のせいにしようとは思わないが、ここでなければこうはならなかったのではないなとは思ってしまう。

そう思ってしまうことがやはりDNAなのだ。だからこれからもあきらめて生きるしかないと、そう思うしかないとしか思えない本であった。


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