ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

NHKの番組から、大衆居酒屋ブーム、立ち飲みを考える

2015-02-24 13:56:19 | ワイン&酒
今月、NHKで興味深いTV番組が2つありました。

ひとつは、2月12日(木)に放送された「クローズアップ現代」
“今夜ももう一杯 ~酒場と日本人の新たな関係~”

もうひとつは、2月20日(金)放送の「ドキュメント72時間」で、
テーマは、“赤羽・おでん屋エレジー”

前者は、今とてもホットな 大衆居酒屋ブーム を取り上げ、立石(葛飾区)や北千住(足立区)などの下町の大衆居酒屋に集う人々を取材したもの。

後者は、赤羽(北区)の練り物店「丸健水産」の店頭を、72時間にわたって追ったドキュメント。
この店は自家製練り物の“おでん”が有名で、テイクアウトはもちろん、店頭でワンカップ酒や缶ビールを立ち飲みしながら、おでんが食べられるのです。つまり、“おでんのイートイン”

大衆居酒屋については、2月14日の記事「バレンタイン誕生日女子会@地元の和食割烹」の後半に、下記のコメントを書きました。

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そういえば、NHKのクローズアップ現代で「大衆酒場」の特集番組を見たのですが、ここのところ大衆酒場が人気で、アルコールを飲まないといわれている若者も、大衆酒場には行く人が増えているとのこと。

居酒屋チェーン店てはない、店主や女将の手作り料理と人情、隣り合った人との自然なコミュニケーション、懐にやさしい会計 などが人気のポイントになっているようです。

若い女性が一人で行くケースも紹介されていました。

今回の女子会で集まったのは和食割烹でしたが、番組を見ていたら、思わず私も大衆酒場に行ってみたくなりました(笑)
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おでんの立ち飲みは、おでん5品+好きなお酒1杯で800円のセットが人気で、ワンカップ酒を選ぶ人は、最後は少し残したお酒におでんのだしを注いで(無料)“だし割り”にするのだとか。
湯気の立つ“だし割り”を画面で見ているだけでも、ほかほか温かそうで、これがじわ~んと自分の身体に沁み込むのを想像し、ほっこりさせられました。

おでん店もひとり客は少なくなく、大衆居酒屋同様、女性のひとり客も珍しくないようです。
40年来の常連客や、夜勤明けで、開店直後の朝9時から飲む人も紹介されていました。

どちらも、東京の下町人情が残る地域
オシャレな雰囲気などない、昔ながらの店です。

大衆居酒屋は、背のびをせずに酒と向き合え、手を伸ばせばすぐ届く店主や隣(他の客)との距離感を自分のペースで測りながらいられるのが、居心地いいのではないでしょうか?

おでんの方は、大衆居酒屋よりは孤独感がありますが、ひとりポツンといても、大きなおでん鍋の湯気が、心身ともにあたたかく包んでくれそうです。

これらの店の人気の理由は、1000円札1枚でも充分楽しめる懐のやさしさ、というのはもちろん、細かく選ばずとも決まったものがポンと出てくる気安さ、もあるように思います。
ビールならいつものビール、日本酒ならカップ酒。

六本木や表参道、銀座などの高級店で、分厚いワインリストから料理に合わせて1本を選び出すのとは別世界ですね。
また、高級レストランでは、ワインはグラス1杯1500~2000円は普通にします。
これは、大衆居酒屋などでは、お酒からつまみまで充分楽しめる金額。

レストランでワインを飲む日もあるけれど、消費増税、円安etc...で、気持ちも懐もさびしくなる中で、ほっとひといきつけるオアシス的な存在が、大衆居酒屋であったり、老舗練り物店のおでん立ち飲みなのかもしれません。

ワイン業界のこれからを考える上でも、実に面白い番組でした。

コメント
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