ほぼ寝たきりになってしまった父だが、身体の状態を見るために、脳や身体のレントゲンと心電図の検査を受けることになった。
ふだんの診察は、高齢者住宅の父の部屋に医師が来て診察してくださるのだが、レントゲンなどの検査となると機材のある病院の方へ行かなければならない。
検査は朝10時半からだった。
病院まで徒歩5分くらいなのだが、私は一時間近く前に父の部屋に着いた。
父は弱っているので、行く準備(着替えやトイレなど)にとても時間がかかる。
さらに身体を動かすと嘔吐することがあるので、病院に辿り着くまで何度も休憩を入れなければならない。
一時間前でも、あまり余裕はないだろうと思っていたが、やはり父はなかなかベッドから起き上がることができず、結果10時半ちょうどに病院に着いた。
父は自力ではもう歩けないので車椅子を用意したが、「行きたくない」と言いながら、しぶしぶ車椅子に乗ってくれた。
深いため息をつき、顔をうなだれて車椅子に座る父の様子が気になって、途中で何度も車椅子を止めて父の様子を見た。
レントゲンを撮る為に入れ歯を外してきたせいか、口元がゆがみ、少しよだれが出ていた。
元気な頃の父と、人相もずいぶん変わってしまった。
さて、検査はいくつかあって時間もかかったが、看護師さんや技師さんの手助けを受けながら、父も嘔吐することなく無事に済ませることができた。
やっと検査が終わり「疲れたでしょう?」と聞くと、父はうなだれたまま、時々口元のよだれを自分で拭きながらうなずいた。
「あとは診察だけだから、もうすこしで終わるからね」と父に言って待っていると、ほどなくして名前を呼ばれた。
すでにレントゲン写真は出来上がり、心電図の結果も来ていた。
「脳卒中などの予兆はないですし、心電図も問題ありません。血液検査の結果もいいですね」
父に向かって説明する先生を前にして、父の目にみるみる力が入っていくのが分かった。
「身体は大丈夫ですよ。でも、水分はじゅうぶんに摂って下さい」
にこやかな笑顔で父を励ますようにおっしゃる先生に、なんと父ははっきりとした口調で「そうですか、ありがとうございます」と言った。
今までうなだれていた姿とは打って変わって背筋は伸び、笑みさえ浮かべながら挨拶をしている!
ゆがんでいた口元も元通りになって、よだれも出していない!
「今日は顔色もいいですね。調子がいいですか?」と医師に言われ「はい」と元気な返事をしている父。
私の前と医師の前とでは、まったく違った表情を見せる。
これは先生の前で精一杯の見栄を張って、頑張っている父だった。
その証拠に一歩診察室を出たら、またしょぼんとした弱々しい老人に戻ってしまったから。
このように他人に接する時には、急にしゃっきりと元気になるのは父だけではなく、うちのお姑さんもそうだし、多分ほかの高齢者でも多いのではないかと思う。
だから介護申請の為に役所の方が来る時など、急に元気になって、職員さんの数々の質問に「できます!できます!なんでもできます!!」と答えて、あとで家族が「実は違います」と説明しなければいけなかったりもする。
しかし、見栄であっても、父が一時的にも元気に振舞えることができるのが嬉しかった。
ちなみに血液検査の結果は非常に良くなっていて、今まで飲んでいた糖尿病の薬も必要なくなった。
数値的には、どこも悪くないはずなのだが、この弱り方はやはり認知症の影響なのだろうかと思う。
そして数値がよくなったのは、多分父が今までよく食べていた菓子類をまったく食べなくなったからだと思う。
父は軽度の糖尿病だったが、糖尿病は認知症と深い関係性があるのだとか。
父は甘い物が大好きでよく食べていたし、年齢のわりにポテチやコーラなども好きで、一人暮らしの気ままさで、不規則な時間帯にも好き勝手に飲み食いしていた。
病気というのは、いろいろな要因があって発症するのだろうが、何をどのように食べてきたかということも非常に関係するのではないかと思う。
父の糖尿病もレビー小体型認知症も、もしかしたらそんな食生活が原因のひとつだったのかもしれない。
話は変わるが、夫の職場に40代のある男性が転勤してこられたそうだ。
その男性と夫が世間話をしていた中で、話題が「健康」の話になったそうだ。
その方が「自分の朝ご飯は、きゅうり1本だけにしています」と話し始めたそうだ。
「昼ごはんは小さな乳酸菌飲料を1本飲むだけ、夕食だけは普通のご飯とおかずを食べています。
ずっとこの食生活を続けていますが、体調はすこぶる良いです。
毎年の健康診断はいつもオールAで、どこも悪いところがありません」とおっしゃったそうだ。
夫が「おなかは空かないのですか?」と聞くと、それがぜんぜん大丈夫なのだとか。
この話を聞いて、やはり食生活は健康にとって大切だなぁと思った。
この方のマネをするつもりはないが、まずは胃腸に負担をかけないように食べ過ぎないことを心掛けようと思う。
それにしても、ここだけの話、この男性のように小食にするということは、私は今ならできる自信がある。(食べ盛りの10代や20代の頃では無理だったが・・・)
年齢のせいなのか、だんだん食欲というものが無くなってきた。
今はずっと何も食べなくても、わりと平気で、目の前にどっさりと食べ物があって、それを食べなければいけないと思うほうが苦痛に感じるかもしれない。
しかし、こうして有り余るくらい食料がある国なんて、日本以外にきっと数えるくらいしかないのだろうなぁ。
この地球上では飢えに苦しむ人たちがどれほどいる事か・・・
そしてこれからもずっと、今までのように有り余る食料が手に入るとは限らないかもしれない。
そのためにも、そして健康のためにも、小食で済む様な燃費のいい身体を作りたいと思う。
ふだんの診察は、高齢者住宅の父の部屋に医師が来て診察してくださるのだが、レントゲンなどの検査となると機材のある病院の方へ行かなければならない。
検査は朝10時半からだった。
病院まで徒歩5分くらいなのだが、私は一時間近く前に父の部屋に着いた。
父は弱っているので、行く準備(着替えやトイレなど)にとても時間がかかる。
さらに身体を動かすと嘔吐することがあるので、病院に辿り着くまで何度も休憩を入れなければならない。
一時間前でも、あまり余裕はないだろうと思っていたが、やはり父はなかなかベッドから起き上がることができず、結果10時半ちょうどに病院に着いた。
父は自力ではもう歩けないので車椅子を用意したが、「行きたくない」と言いながら、しぶしぶ車椅子に乗ってくれた。
深いため息をつき、顔をうなだれて車椅子に座る父の様子が気になって、途中で何度も車椅子を止めて父の様子を見た。
レントゲンを撮る為に入れ歯を外してきたせいか、口元がゆがみ、少しよだれが出ていた。
元気な頃の父と、人相もずいぶん変わってしまった。
さて、検査はいくつかあって時間もかかったが、看護師さんや技師さんの手助けを受けながら、父も嘔吐することなく無事に済ませることができた。
やっと検査が終わり「疲れたでしょう?」と聞くと、父はうなだれたまま、時々口元のよだれを自分で拭きながらうなずいた。
「あとは診察だけだから、もうすこしで終わるからね」と父に言って待っていると、ほどなくして名前を呼ばれた。
すでにレントゲン写真は出来上がり、心電図の結果も来ていた。
「脳卒中などの予兆はないですし、心電図も問題ありません。血液検査の結果もいいですね」
父に向かって説明する先生を前にして、父の目にみるみる力が入っていくのが分かった。
「身体は大丈夫ですよ。でも、水分はじゅうぶんに摂って下さい」
にこやかな笑顔で父を励ますようにおっしゃる先生に、なんと父ははっきりとした口調で「そうですか、ありがとうございます」と言った。
今までうなだれていた姿とは打って変わって背筋は伸び、笑みさえ浮かべながら挨拶をしている!
ゆがんでいた口元も元通りになって、よだれも出していない!
「今日は顔色もいいですね。調子がいいですか?」と医師に言われ「はい」と元気な返事をしている父。
私の前と医師の前とでは、まったく違った表情を見せる。
これは先生の前で精一杯の見栄を張って、頑張っている父だった。
その証拠に一歩診察室を出たら、またしょぼんとした弱々しい老人に戻ってしまったから。
このように他人に接する時には、急にしゃっきりと元気になるのは父だけではなく、うちのお姑さんもそうだし、多分ほかの高齢者でも多いのではないかと思う。
だから介護申請の為に役所の方が来る時など、急に元気になって、職員さんの数々の質問に「できます!できます!なんでもできます!!」と答えて、あとで家族が「実は違います」と説明しなければいけなかったりもする。
しかし、見栄であっても、父が一時的にも元気に振舞えることができるのが嬉しかった。
ちなみに血液検査の結果は非常に良くなっていて、今まで飲んでいた糖尿病の薬も必要なくなった。
数値的には、どこも悪くないはずなのだが、この弱り方はやはり認知症の影響なのだろうかと思う。
そして数値がよくなったのは、多分父が今までよく食べていた菓子類をまったく食べなくなったからだと思う。
父は軽度の糖尿病だったが、糖尿病は認知症と深い関係性があるのだとか。
父は甘い物が大好きでよく食べていたし、年齢のわりにポテチやコーラなども好きで、一人暮らしの気ままさで、不規則な時間帯にも好き勝手に飲み食いしていた。
病気というのは、いろいろな要因があって発症するのだろうが、何をどのように食べてきたかということも非常に関係するのではないかと思う。
父の糖尿病もレビー小体型認知症も、もしかしたらそんな食生活が原因のひとつだったのかもしれない。
話は変わるが、夫の職場に40代のある男性が転勤してこられたそうだ。
その男性と夫が世間話をしていた中で、話題が「健康」の話になったそうだ。
その方が「自分の朝ご飯は、きゅうり1本だけにしています」と話し始めたそうだ。
「昼ごはんは小さな乳酸菌飲料を1本飲むだけ、夕食だけは普通のご飯とおかずを食べています。
ずっとこの食生活を続けていますが、体調はすこぶる良いです。
毎年の健康診断はいつもオールAで、どこも悪いところがありません」とおっしゃったそうだ。
夫が「おなかは空かないのですか?」と聞くと、それがぜんぜん大丈夫なのだとか。
この話を聞いて、やはり食生活は健康にとって大切だなぁと思った。
この方のマネをするつもりはないが、まずは胃腸に負担をかけないように食べ過ぎないことを心掛けようと思う。
それにしても、ここだけの話、この男性のように小食にするということは、私は今ならできる自信がある。(食べ盛りの10代や20代の頃では無理だったが・・・)
年齢のせいなのか、だんだん食欲というものが無くなってきた。
今はずっと何も食べなくても、わりと平気で、目の前にどっさりと食べ物があって、それを食べなければいけないと思うほうが苦痛に感じるかもしれない。
しかし、こうして有り余るくらい食料がある国なんて、日本以外にきっと数えるくらいしかないのだろうなぁ。
この地球上では飢えに苦しむ人たちがどれほどいる事か・・・
そしてこれからもずっと、今までのように有り余る食料が手に入るとは限らないかもしれない。
そのためにも、そして健康のためにも、小食で済む様な燃費のいい身体を作りたいと思う。