次女が幼稚園に通っていた頃に仲良くなったママ友から久しぶりに電話をもらった。
当時は子ども同士も仲良くなって、母子共々一緒に遊ぶことが多かったが、子どもの卒園後すぐに彼女はご主人の転勤で本州へ行ってしまった。
それ以来、会うことはなくなったが、離れてからもこうしてたまに電話で話すことがある。
「今ね、地元のバス路線を変更してもらうための活動をしようと思っているんだけど、どう思う?」挨拶もそこそこにいきなり彼女にそう聞かれた。
彼女の住む町の住民の足はバスだけで、そのバスが走るコースは昔から変わっていないのだという。
ところが数年前から町のはずれに新しい住宅が建ち始めて、多くの人が移り住んできた。
その中にママ友さん一家もいるのだが、そこは昔から走るバス路線から離れていて、バスに乗るためにはかなりの距離を歩かなければいけないそうだ。
「若い人ならまだしも、高齢者は歩くのが大変なのよ。新しい住宅街をバスが通ってくれたら、喜ぶ人がたくさんいると思うんだ」
なるほど、、、それはよい考え。
「それでバス会社に直接電話してお願いしたんだけど、あっけなく断られちゃった。しつこく食い下がったんだけど、面倒なことはしたくないって態度がミエミエで、、、ねえ、ほかに何かいい考えはない?」
彼女らしいなあと思った。
彼女は子どもを幼稚園に通わせている時も、子どもたちがより良く過ごすことができるようにと色々考えて、おかしいと思うことを先頭に立って幼稚園側に交渉してくれた。
それによって、子どもたちが快適に過ごせたのは言うまでもない。
思えば幼稚園の時も、今と同じようなことがあった。
当時、幼稚園バスは走るコースが決まっていて、彼女と私を含めて数家族は、少し離れたバス停まで歩かなければいけなかった。
悪天候の日など下の子がいる人は、二人の小さな子どもを連れてバス停まで行くのは、けっこう大変だった。
そこで立ち上がったのが、彼女だった。
「変えてもらいましょう!」と言って、私たちの代表として幼稚園側にバス停の変更を願い出てくれた。
その時は揉めることもなく、あっさりと変更してくれたが、今回は幼稚園バスとは規模が違う。
地元のバス会社に個人がお願いして、すんなり変えてくれるとは考えられない。
そこで、二人で電話による作戦会議を開いた。
作戦会議の内容は、あまりここで書くことはできないが、ようは多くの人を巻き込んだら良いのではないかという結論になった。
個人の力は小さいが、一人ひとりの力を合わせたら大きな力になる。
みんなが便利になることなら、バス会社だって、町だって、動かせるのではないだろうか。
ただし、反対する人も必ず一定数いるだろうし、バス会社の利益がどうなるのかなど細かなことを話し合っていかなければいけない。
こちらの融通ばかりを押し通さず、これからよく話し合わないといけない。
あー、、、考えただけで大変そうだ。
一緒に考えたのに、尻込みしている自分がいる。
弱腰になっている私をよそに、彼女から今度はメールが来た。
「協力してくれそうな人たちに連絡しています。多くの人が動いてくれるといいのですが」
「戦うオンナ」という文字が頭に浮かんだ。
それは決して彼女を揶揄する意味ではない。
尊敬の気持ちから出た言葉だが、多くの人が幸せになるために戦えるのは本当にすごいことだと思う。
私なら多少不便だと思っても、諸々を考えると億劫で彼女のようには動けない。だから、それを行動できる彼女のことは尊敬しかない。
彼女と話したら、きっとできるだろうという確信と力が湧いてくるような気がした。