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私が作っている畑では、いま野菜がツルを伸ばしています。
その野菜は、光が当たる方に向かってツルをメキメキと伸ばしています。
同様なことが、子どもの成長にもあてはまります。
以前、私が合唱の指揮をしている生徒に声をかけたことがあります。
その生徒は、歌う友だちの大きな声を引き出そうと、曲調にあわせ体全体を動かして、自らも歌いながら指揮をしていました。
わたしは、「きみは指揮がうまいね」と評価をしました。
すると、今まで本人が意識していなかった「自分は指揮が上手」という点に意識が向きます。
そのうちに、その生徒は自然に進んで、練習を一人でしていました。
イメージトレーニングのように、メロディを口ずさみ指揮棒を振って練習していました。
そのうちに、さらに指揮がうまくなりました。
また、合唱の伴奏をしている生徒にも声をかけたことがあります。
「きみはピアノ伴奏がうまいね。みんなが歌いやすいと思うよ」。
その生徒は、全面が見える楽譜をピアノの譜面台に置いていました。
「これは、どうしたん?」
「演奏の途中で、楽譜のページをくるのはたいへんなんで、縮小コピーをつなげて一枚にしました」と答えました。
「そうか。そうやって工夫をするから、うまく弾けるやね」
おそらく、その子の場合は、「工夫をすること」に意識が当たりました。
おじいちゃんが、後日校長室を訪ねてこられ、わたしに言ってくれました。
「孫は、勉強するときも、なんやらいろいろ工夫して、コツコツとやってますわ」
その子は自分から進んで家庭学習をしていることを、おじいちゃんが私に教えてくれました。
以上のことから、人間はその強みに意識を当てると、伸びていくことがわかります。
そこで、わたしが思うことがあります。
ふつう、子どもはちょっとほめられただけなら、そのことはすぐに忘れてしまいます。
だから、そのことを記憶にとどめておくといいのです。
ノートに年月日を入れ、ほめられたことを書き込んでいきます。
ノートでなく、スマホにメモするのでもかまいません。
そのメモは、ほめられたり、好評価を受けたものだけを記入します。
何年か経つと、そのメモは光を当てられた自分の強みだけになります。
そして、そのメモに書かれている記憶は、ずっと意識されていくようになります。
このようにして、子どもは成長して、伸びていきます。