さくらの日々是好日

余命半年から生還♪今年21年目の【金つなぎ勝ち抜きRoad】を走り続ける、多重がん患者の病老の日々や患者会活動をご紹介!

♪金つなぎの原点、 奈良 ・ 下下味亭(かがみてい)に立ち寄る

2010年10月17日 21時31分27秒 | さくら的非日常の日々
奈良に行ったら、必ずお会いしたい方がおられる。
福島克治さんと照代さん夫妻だ。

近鉄奈良駅から登大路の広い通りを東大寺の方向に向かって左側に、「下下味亭」は、あった。

いえ。
今もあるのだけれど、亡夫が好んで通ったかやく飯で一世を風靡した、あの下下味亭は、もう、ない。

遠忌を終えて、登大路をゆるゆると下り、「あ、あった~!」
「下下味亭」はいま、おしゃれな2Fの喫茶店に生まれ変わり、経営者も代わって旧主の福島克治さんと照代さん夫妻は、1Fに本業の画家夫妻として住まっておられた。

「あらぁ~、お懐かしい!」
克治さんは、個展開催のため生駒に出掛けておられるそうでお目もじ叶わず、10年ぶりにお会いできた照代さんと、しばらくの歓談を喜びあった。

平成2年に上梓した、さくらの抗がん闘病記『きっと良くなる 必ず良くなる ~ 多重がんとの闘いの記録』のまえがきに、福島さんご夫妻のことをいささか書かせていただいた。

少し長くなるけれど、これが【金つなぎの茶碗】の原点なので、以下に転記させていただきたい。


                  ◆


『先代の下下味亭は、昭和四十一年から平成二年まで、二十四年にわたって味わいの良さと【売り切れごめん】の潔さで人気を博したかやく飯の店である。
          
             (中略)

その気骨を当時、雑誌「暮らしの手帳」や全国のガイドブックなどに度々紹介され、今も記憶に残すひとの多い名物店である。

店は、供される器が李朝や古伊万里の碗であることも評判を呼んだ。たとえば日々が入って使えなくなったそれら骨董茶碗の寿命を惜しみ、亭主の福島克治さんは高価な金でつないでは「碗の天寿」を全うさせたという。
骨董会でつとに知られる金継ぎ茶碗(金繕いとも)のことである。

わずか一年足らずの間に二つのがんを患い、二度の手術と一年半に及ぶ抗がん治療を終えた私は、ひび割れた一個の茶碗である。
私のこの、土くれのような体をつないでくれているのは、下下味亭の茶碗と同じように【金】。 けれど、金継ぎ茶碗を自称するのは僭越だ。 

せめて金つなぎの茶碗を名乗り、つないでくれた【金】の皆さまに、感謝の思いを伝えたいーそんな次第で「金つなぎの茶碗」は、自らを客観視した私の造語である。

私を繕ってくださった【金】とは、医師、看護婦、同病の人たち、友人・知人、職場の上司や仲間たち、そして家族ー。 支えてくださった「素晴らしき金たち」のおかげで、死の淵から生還をみた。

              (後略)』

下下味亭はかくのごとき次第にて、金つなぎの原点なのである。
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1 コメント

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Unknown (通りすがり)
2019-01-07 18:46:47
ありがとう。金つなぎの茶碗の意味がよく分かった。当方、前立腺がんの3期。自分が金つなぎの茶碗になってみて、近代医療や家族、周囲のすべてに感謝の気持ちが湧いてきた。ありがとう。また来ます
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