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『ちくま日本文学 泉鏡花』その5

2016年01月16日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
『天守物語』の中に、たばこに関する言葉が4か所ありました----「長煙管」「煙草」「煙管(きせる)」「吸い口」----。

【240ページ】
女郎花 夫人(おくさま)。(と長煙管(ながきせる)にて煙草を捧ぐ。)
夫人 (取って吸う、そのまま吸口を姫に渡す)この頃は、めしあがるそうだね。
亀姫 ええ、どちらも。(うけて、その煙草を吸いつつ、左の手に杯の真似をす。)

【242ページ】
朱の盤 ご進物が汚れたわ。鱗の落ちた鱸(ずずき)の鰭(ひれ)を真水で洗う、手の悪い魚売人には似たれども、その儀では決してない。姥殿(うばどの)、こなた、一拭い、清めた上で進ぜまいかの。
夫人 (煙管を手に支(つ)き、面正しくきっと視て)気遣いには及びません、血だらけなは、なおおいしかろう。

【259ページ】
夫人 確かにお言いなさいまし。留守でなければ、いつでも居るから。
図書 武士の面目に存じますーーご免。
雪洞を取って静かに対座す。夫人長煙管を取って、払く音に、図書板敷にて一度留まり、直ちに梯子の口にて、燈を下に、壇に隠る。

【279~280ページ】
桃六 むむ、見える、恥ずかしそうに見える、極りの悪そうに見える、がやっぱり嬉しそうに見える、はっはっはっはっ。睦じいな、若いもの。(石を切って、ほくちをのぞませ、煙管を横銜(くわ)えに煙草を、すぱすぱ)気苦労の挙句は休め、安らかに一寝入さっせえ。そのうち、もそっと、その上にも清々い目にして進ぜよう。
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