ほろ酔い気分で、伊勢崎モールを歩いていたら、業務スーパーさんにクズしいたけが格安で売っていたので、三つは焼いて食べ、残りは干ししいたけにしてみました。
122〜123ページ チバナのところには週の半分も帰っていない。レイは美里に囲れた情夫だった。あの暴動をくぐり抜けて出所したときには、ある種の女たちが放っておかない色男に変貌していた。眉にも口元にもほど良い色気が乗って、二十代なかばにして鋭利な風格がそなわった。すっかり気前も良くなって、年下のごろつきにも慕われ、路地をくわえ煙草で歩く姿もさまになってなった。
124ページ 遊技場や映画館がひしめく一帯を抜けると、古い雑貨店や質屋、鍼灸院が並んだ裏通りに大きな廃倉庫があった。外壁のペンキがはげて蜥蜴のうろこのようにささくれだち、煙草の吸い殻が扉の前にふきだまっている。
171ページ あいさつを聞き流していたグスクは、斜めうしろの四人席に座った紳士の、広げた新聞紙のわきからあふれだす副流煙が気になった。壊れた蒸気船のようにもくもくと煙を噴いている。グスクは煙草を吸わないので食事の席で煙に巻かれるのは苦手だった。
煙のはざまに、四十がらみの男の顔が見えた。
171ページ ところがそんな男が同席させているのは、華やかなドレスで着飾っていても山出しとわかるふたりの島娘だった。女たちに食事をさせながら"煙男"は一言もしゃべらずに英字新聞を読んでいる。さりげなくこちらのやりとりに聞き耳を立てているようでもあった。金門クラブが気になるのか、もしくはこの煙男も、グスクのように場ちがいな部外者がまざっているのは面白くないのかもしれない。
【閑話休題】は、ヤマコの教師感についてです。私も年に一度、とある大学で一コマだけの授業をつけ持っているので、次の記述がとても参考になりました。
142ページ だけど準備や計画に寄りかからず、教師としての理想像にこだわらずに臨んだときほど、児童からの反響があった。路地裏でリラックスしているときのように驕らず、気負わず、子どもたちの世界をひろげるかもしれない知識を伝えることに無心で臨めばいい。そんなことはだれも教えてくれなかったけど、たぶんそういう心得は教わって身につくものじゃない。良い教師になるには、良い教師になろうとしないことが肝心なのかもね(つづく)
124ページ 遊技場や映画館がひしめく一帯を抜けると、古い雑貨店や質屋、鍼灸院が並んだ裏通りに大きな廃倉庫があった。外壁のペンキがはげて蜥蜴のうろこのようにささくれだち、煙草の吸い殻が扉の前にふきだまっている。
171ページ あいさつを聞き流していたグスクは、斜めうしろの四人席に座った紳士の、広げた新聞紙のわきからあふれだす副流煙が気になった。壊れた蒸気船のようにもくもくと煙を噴いている。グスクは煙草を吸わないので食事の席で煙に巻かれるのは苦手だった。
煙のはざまに、四十がらみの男の顔が見えた。
171ページ ところがそんな男が同席させているのは、華やかなドレスで着飾っていても山出しとわかるふたりの島娘だった。女たちに食事をさせながら"煙男"は一言もしゃべらずに英字新聞を読んでいる。さりげなくこちらのやりとりに聞き耳を立てているようでもあった。金門クラブが気になるのか、もしくはこの煙男も、グスクのように場ちがいな部外者がまざっているのは面白くないのかもしれない。
【閑話休題】は、ヤマコの教師感についてです。私も年に一度、とある大学で一コマだけの授業をつけ持っているので、次の記述がとても参考になりました。
142ページ だけど準備や計画に寄りかからず、教師としての理想像にこだわらずに臨んだときほど、児童からの反響があった。路地裏でリラックスしているときのように驕らず、気負わず、子どもたちの世界をひろげるかもしれない知識を伝えることに無心で臨めばいい。そんなことはだれも教えてくれなかったけど、たぶんそういう心得は教わって身につくものじゃない。良い教師になるには、良い教師になろうとしないことが肝心なのかもね(つづく)
115ページ 糊のきいたシャツの襟元にも、捲りあげた袖口にも、引き締まった蜜色の肌をのぞかせている。両切りの煙草をくわえたその男が「あんた、タイラさんやあらんね!」と声を弾ませた。
「よう、レイ」と客の男が返した。
117ページ その日の気分でレイは、地元の街が好きにも嫌いにもなるけど、この島でもっともすばらしいものが特飲街の熱気だという思いが変わったことはない(華やかなネオンと雑踏、香水と煙草のにおい、つややかな嬌声。夜という夜にあふれかえる祝祭の多幸感、あきさみよう! )。
119ページ アメリカ煙草に火を点けた親分は、ほほをすぼめて火種を焚きつける。グロスを塗ったように汗ばんだウチナー面が、屋上の闇のなかに照らしだされる。
121〜122ページ 手まねきしてやると、山羊の目は嬉しそうについてきた。午さがりの美里では、寝起きの女給がすっぴんで煙草をふかししてふてくされたように軒先を掃除している。(つづく)
「よう、レイ」と客の男が返した。
117ページ その日の気分でレイは、地元の街が好きにも嫌いにもなるけど、この島でもっともすばらしいものが特飲街の熱気だという思いが変わったことはない(華やかなネオンと雑踏、香水と煙草のにおい、つややかな嬌声。夜という夜にあふれかえる祝祭の多幸感、あきさみよう! )。
119ページ アメリカ煙草に火を点けた親分は、ほほをすぼめて火種を焚きつける。グロスを塗ったように汗ばんだウチナー面が、屋上の闇のなかに照らしだされる。
121〜122ページ 手まねきしてやると、山羊の目は嬉しそうについてきた。午さがりの美里では、寝起きの女給がすっぴんで煙草をふかししてふてくされたように軒先を掃除している。(つづく)
62ページ 起伏だらけの細い路地。美里はコザにもまして入り組んでいる。薮のなかでとぐろを崩した蛇のようにレイは通りを抜けていく。吸い殻を捨てたさきから次の一本に火を点けて、四つ目の火種が灯るころには、目当てのスラブ家のニ階を見上げていた。
62ページ 情熱のたぎりに身をゆだねてレイは女に襲いかかった。はずみで唇から煙草が落ちたけど、逃げる尻を追いまわすのに夢中で、足の裏で火種を踏んでもまるで熱くなかった。
69ページ もちろん見返りは必要だけど(煙草や金銭を紐でくくって投げ込むのさ)、この方法ならこまめにやりとりできるはずだった。ヤマコは毎日おなじ時間におなじ場所で、レイからの報せを待っていた。
90〜91ページ そのうちのひとり、顔の前にもくもくと煙草の煙を充満させた男が号令を発して、警官たちに射撃体制をとらせた。(つづく)
62ページ 情熱のたぎりに身をゆだねてレイは女に襲いかかった。はずみで唇から煙草が落ちたけど、逃げる尻を追いまわすのに夢中で、足の裏で火種を踏んでもまるで熱くなかった。
69ページ もちろん見返りは必要だけど(煙草や金銭を紐でくくって投げ込むのさ)、この方法ならこまめにやりとりできるはずだった。ヤマコは毎日おなじ時間におなじ場所で、レイからの報せを待っていた。
90〜91ページ そのうちのひとり、顔の前にもくもくと煙草の煙を充満させた男が号令を発して、警官たちに射撃体制をとらせた。(つづく)
それでは、さっそく抜き書きのスタートです。
45ページ 赤タマやラクダ(アメリカ産の煙草をみんなが吸っていた)、砂糖、食用油、メリケン粉、シーフードや果物の缶詰----。
50ページ だからこそ憲兵たちは天敵だったのさ。たったいま島に駐留しているのはあの戦争を闘った兵士じゃない、占領のあとに本国から送られてきた連中だから、現地民へのささやかな心寄せもありはしない。かっこよく煙草を吸うことに躍起になって、島の娘たちをB円紙幣(このころはまだアメリカの発行する軍票が法定通貨だった)でなびかせようとする、おれさま以外の人間はおれさまを敬えって出合いばっかりなんだもんな!
54ページ 病院の窓から現れるなりレイは、塀に立ち小便をはじめた。滴も切らずにズボンを上げると煙草とマッチを出して一服する。コザのだれよりも手癖が悪いのはレイだ、同じ入院患者からせしめたらしい。
57ページ 四つの舎房に囲まれた広場では、暑すぎる午後に舎房を抜けだした看守は一服を入れていた。だけどレイたちは、好きなときに外気にふれられない。(つづく)
45ページ 赤タマやラクダ(アメリカ産の煙草をみんなが吸っていた)、砂糖、食用油、メリケン粉、シーフードや果物の缶詰----。
50ページ だからこそ憲兵たちは天敵だったのさ。たったいま島に駐留しているのはあの戦争を闘った兵士じゃない、占領のあとに本国から送られてきた連中だから、現地民へのささやかな心寄せもありはしない。かっこよく煙草を吸うことに躍起になって、島の娘たちをB円紙幣(このころはまだアメリカの発行する軍票が法定通貨だった)でなびかせようとする、おれさま以外の人間はおれさまを敬えって出合いばっかりなんだもんな!
54ページ 病院の窓から現れるなりレイは、塀に立ち小便をはじめた。滴も切らずにズボンを上げると煙草とマッチを出して一服する。コザのだれよりも手癖が悪いのはレイだ、同じ入院患者からせしめたらしい。
57ページ 四つの舎房に囲まれた広場では、暑すぎる午後に舎房を抜けだした看守は一服を入れていた。だけどレイたちは、好きなときに外気にふれられない。(つづく)
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