
ザ・前座修業
稲田和浩・守田梢路
NHK出版・生活人新書・・700円
☆☆
「社会の前座たち」に贈る、落語界から一人前になるための、英知と言葉と題し、
今の若者たちに、修業とは何か。周りへの気づかいとか、礼儀を教える、
NHK出版のだす、一見硬そうな、教育本である。
前座時代を語る、五人の噺家は、
柳家小三冶・・「修業の根本は、手を使い、心をこめることだ」
三遊亭円丈・・「好きに生きるためには、自分を殺す時代があっていい」
林家正蔵・・・・「喜んで身体を使って働くことは、前座時代だけではない、人生の基本だ」
春風亭昇太・・「気を遣ってうまく立ち振る舞え。。言葉を読み込み、感性とセンスを磨け」と、
前座時代の英知の言葉を示している。
落語ファンにも、各人が前座時代に経験した修業は、興味あるおもしろい内容である。
各人の師匠は、芸はもとより、人生の生きざまを、個性あるやり方で教えている。
序列に従い、礼儀を重んじ、ひたすら激務をこなす、前座の修業には、
日本の忘れていた、「仕える」「礼節」「辛抱」の心が、羨ましいぐらい残っている。
弟子入りとは、職業の選択肢ではなく、人生の選択肢だからと、
価値の共有できる師匠を選らばなければならない。
落語という世界、師匠を選ぶという選択肢が、幅広くあるだけ、
落語家を目指す若者・弟子入りという時点で、
あるていど芸への志向性が定まっているんでしょうな。
まあ、入門は許されるかどうかは、分かりませんが、
私なら、この五人の中では、やはり小三冶師匠でおますな。
![]() | ザ・前座修業―5人の落語家が語る (生活人新書) 稲田 和浩,守田 梢路 日本放送出版協会 このアイテムの詳細を見る |