![]() | ジーノの家―イタリア10景 |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
☆☆☆☆☆
事実は小説より奇なり、この一言がピッタリの本。
著者が、長年住むというよりは暮らしたイタリア・10景を綴ったエッセイ。
そこで起った数々の出来事は、フィクションですべて映画を見ている如く
ドキドキハラハラさせてくれる。
ミラノの物騒な〈黒いミラノ〉という処へ、取材と云いながら、
怪しげな地区を自分の目で確かめてみたい衝動で乗り込む。
そこのバールでの、閉ざされた冷え冷えとした視線、
一寸したサスペンスドラマのはじまりである。
北イタリアの地方都市で、「自分は北斎の生まれ変わり」という男に会う。
その噺は、夢物語のようでもあり、人の輪廻ということでは何か赤い糸で結ばれて
いるようでもあり、そのリグリアの風景画を目にすれば・・・葛飾北斎の微笑は。
夜中に玄関ドアのブザーがジリーン、ジリーンとけたたましく鳴る。いったい誰。
一階には通信工学の技術者家族。二階は女子大生三人が下宿。三階は、インテリ老夫婦。
四階の哲学教授に、五階には作者。そして六階にはペルー人の看護人と共に病弱な夫人。
実は住んでいたアパートが火事に、その様子はさながら、「タワーリングインフェルノ」。
その火事を未然に防いだのは一匹の黒猫・・・・。
「除災招福」としてこの集まりを黒猫クラブと命名。
犬を飼い、その犬仲間のイヌが誘拐にあう。
犬の身代金要求、深夜に公園に呼びだされて、相場は五百から三千ユーロ。
犬仲間五人で、その公園に乗込む・・・・・犯人との直接交渉、ワクワクドキドキ。
まるで「スタンドバイミー」みたいな冒険物語。
「海の見える窓あり」「町の中心でありながら、静か」「すばらしいパノラマ」
「住み手の個性を活かせる空間」「中世時代の建物の最上階、屋根付き」
このワクワクする不動産広告。(ナオユキさんには格好のツッコミ材料だが)
その「住み手の個性を活かせる空間」こそが、この本の題になっている「ジーノの家」。
坂を登り詰めた先は、後ろは山、前は海。山の上の一軒家で、そして、とても小さい。
道沿いから伸びる外界と家をつなぐ頼りなく風に揺れる一本の電線。
その道中に語られるジーノの半生・・・家の歴史をすべてを消して、他人に貸そうと。
その「住み手の個性を活かせる家」に、作者は住みはじめた・・・。
この様な、短編なる噺が全部で10章・・・・大事に、大事に、読みました。
この感動は、沢木耕太郎の「深夜特急」以来。
年の瀬に、ようやくこの本に会えたことは、サンタさんからの贈りものですな。
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