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小説を書いている、大前粟生さん。なぜか小説では、物語の時間につきあうばかりで、自分自身の時間や体のことをどんどん忘れてしまう。一方短歌は、もっと自分自身から発せられる実感をそのままに表現できるおもしろみがある、と。
でも、大前粟生さんお短歌は難解、心の底は難解。その中でも、なんとなく気になった歌は。
顎を置くのにちょうどいい心だと思われた昼、動けない
巡る度深くなる目の下のくま来世に来たら経験と呼ぶ
地下鉄の湿気でたわむ広告を自由にするため目は閉じた
公園のシャボン玉から生まれた君とでんぐり返って花束になる
約束に現れた人を遠くから眺めたさびしさつながりますように
電柱を倒す計画犬の尿革命はもうはじまっている
体から力が抜けてコーヒーの蓋開けられなかった六地蔵駅
ポカリスエット突然に目減りして光の代わりに光が入る
生活を味わうための文体として雪 遅く起きるから降っていて
ほがらかな血液の流れ悲しみは取り除けないからめぐらしてみる