六世笑福亭松鶴はなし | |
クリエーター情報なし | |
岩波書店 |
☆☆☆
鶴瓶がインタビューする米朝、文枝、春団治などの証言により、
六代目松鶴の、芸に寄せる真摯な想いが明らかになる。
一言で云うと、豪放磊落でありながら、上方落語の復興に果たした功績は、
図り知れぬものがある。
その中で、落語の芸と題し、松鶴と越智治雄氏との対談が興味深くおもしろい。
「らくだの演出」についてと、松鶴がネタおろしする前のメモ書きがある。
枕・・・・千日の火屋
時・・・・夏。それも残暑の厳しい頃とする。昼過ぎから夕方。
場所・・長屋の造り。豆腐屋(表通り)。大家。月番(コグチから二軒目)
遊び人のこしらえから入っていく。
・・・・・カスの遊び人だが、なりはしっかりしている。
紙屑屋の性格
・・・・・酒と博打で身をすったのは嘘。酒だけ。嫌にになっている。
・・・・・最初の一声から描き方を変える。今迄の、初め愛想笑いをしていて、
最後にやくざのようになるのは演出の謝り。-暗い感じ、重い口、上品なところのある言葉。
酒の呑み方
・・・・・やけくそになって紙屑屋は呑んでいる。一升徳利三本をうまく空けなければならない。
勿論紙屑屋の方が強い。・・・荒い事を言わず凄みをきかせる。一合茶碗、一息で呑める。
箸が乱れてくる。おかずはあまり食べない。」・・
・・・・・・・箸の置き方まで、最初は小皿、次は左手で受けながら、ぼちぼちじか箸に、
きっちり前に置いた箸が、だんだんぞんざいになりお膳の上にポンと落とすようになる
・・なんて細かいことまで、留意されているのか、米朝さんならいざ知らず、六代目の口から
発せられるのが、驚き。・・豪放磊落に見せながら、いかに細かい計算があったのか、感動。
らくだをただ怖がるのはいけない。
水滸伝の人間のように大きな事ばかり言ってもいたらくだ。
先ず最初の月番の所へ行く。泣き笑いの祝儀。
返事を聞かんと困ると言われて、気軽に荷物を預ける。
大家の所へらくだを背負って行く。「豚と相撲とった夢見て、らくだ背負う」
・・・別のくすぐりに変える(実際は、豚をまめだに変更)。長屋の人間の扱い。
びっくりして香奠を持ってくる。
家主・・“かんかんのう”・・・死骸を見てすぐ謝る。・・・小文冶さんの演出。
“ちっとは嫌がられている家主”やと言った手前、踊らせる迄強がっている。
桶・・・八百屋ではいけない。
西日の中を歩いていく。(20分位の道)約1時間・・・・。
私たちは、舞台の落語を聴いて、単にあははと笑っているだけですが、
噺家さんの高座には、演者としての、深く緻密な計算された演出があるんですな。
このあと、「市助酒の酔い」、「噺の変幻」、「言葉の深さ」、「呼吸のむずかしさ」と
六代目が真正面から語る、芸談は、日頃聴いている噺だけに、読み応えがありまっせ。
是非、笑福亭ファンは図書館でも、手にされることをお勧め致します。
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