外国生活が長くなると恋しくなるもの、そのひとつに日本の娯楽があげられると思います。私はというとさびしくなると妹に送ってもらったCDのマツケンサンバをかけて、自分も「マツケン・サンバ~!!!」などと歌っております。(日本にいたらたぶんしない。) また友人から紅白を録画したものを送ってもらったのですが、それを繰り返し繰り返し見たりしてます。(これも日本にいたらしないこと。) やはり、音楽や歌はそれほど心の中のどこかにしみついているのでしょうね。
ところで私の友人の中にボリスラーバちゃんがいます。通称ボビー。彼女の仕事は何とペヴェッツァ、つまり歌手!!! です。と言ってもまだまだかけ出し。メハナ(食堂、居酒屋と言ってもいいかも)にバンドの人たちとまわり、自分のレパートリーを歌い、リクエストにこたえる、といったところだそうです。流しに近い感じかな。
最初、「歌手になりたい」と家族に言ったら、大反対!! やはり飲んで酔っているお客からお金をもらう仕事は危険がつき物。嫁入り前の10代の娘にはアブナすぎます。でも、はじめると今度は別の事情でやめられなくなりました。家族のために、です。ボビーのお姉さんが、離婚の直後に二人目を妊娠していることがわかり、二人目のこの子は認知を受けないままこの家に生まれることになったのです。しかもボビーのお母さんが毎日働いてももらえる給料は一ヶ月100レバ(7000円)くらい。一晩歌えばいいときでは100レバ(つまりお母さんの一ヶ月の給料と同じくらい)手に入るペヴェッツァの仕事をやめるわけにはいかなくなったのです。 でも、芸能活動だけでは不安定なので、月~金で建設現場を手伝う仕事もしています。 夕方5時まで働いたあと深夜まで歌ってクタクタになって帰ってくる・・・でも彼女エライんです。生まれたばかりのお姉さんの子供の世話もしてあげたりして・・・。
「ネエ! どんな歌歌ってるのか、歌ってみてよ!!」 ときいても、
「え~・・・ やだ~!」 と言っていたのですが(ボビーは普段とてもシャイでおとなしいのです)、先日彼女のPV(というか、メハナのオーナーなどに売り込みに行くときに見せる用)のDVDを借りてきてみることができました。 すると、・・・ ボビー! うまいじゃん!!
この録画のときは、彼女いわく、風邪をひいていてうまく歌えなかったのが心残り、だとか。にしても、最近始めたにしてはウマいゾ!やはり彼女の苦労の多い人生がその歌声にツヤのようなものを与えているのでしょうか?
ブルガリアの歌は、チョッと哀愁がかった独特のコブシ回しがあり、日本の演歌とチョッと似てるような気がします。(と思うのは私だけ?)
でも、ボビーは今、この仕事から足を洗いたいと考えているのです。やはり、歌以外にかかわる問題(給料不払いなど)が多すぎるし、職場環境が悪すぎるため、だそうです。でも、今の家族を養っていける仕事はなかなかありません。彼女の住んでいるラドミルは写真のような風景のところ。仕事なんてそんなにあるはずありません。昼の建設現場の手伝いの仕事も契約は冬まで。どうする!? ボビー!!