日常一般

日常生活にはびこる誤解、誤りを正す。

ダニエル書1、1~6章

2017年06月13日 | Weblog
  ダニエル書1 1~6章
 はじめに
 ダニエル書に限らず預言書を読む場合、「ヨハネの黙示録」を併せ読むことをお勧めします。預言書の行き着く先はこの書にあるからです。「ヨハネの黙示録」は新約聖書巻末の一書で、小アジアで迫害されているキリスト教徒を慰謝、激励し、キリストの再来、地上の王国の滅亡と神の国の到来とを叙述しています。世の終わりに義人の復活が語られ、主によって選ばれたイスラエルの民の行くべき場所が啓示されています。神は、自然界と人間界をはるかに超越した存在であるにも拘らず、イスラエルの歴史に内在し、介在しイスラエルの民を導いていく存在として現れます。これは旧約聖書に一貫として貫く思想であり、ダニエル書も例外では無いのです。それは祖国を追われ、流浪の民となったイスラエルの民にとって最後で、唯一の希望だったのです。
 このように、ダニエル書は、ダニエルの時代から、世の終わりまでの、歴史的に広範囲にわたる預言を語っています。主に忠実のものは、最後には復活への道が用意されているのです

 ダニエル書
 ダニエル書の最終目的は、決して滅びることのない神の国です。「--------その主権は永遠の主権で滅びることが無い(7:14)」「国と主権と天下の国々の権威とは『いと高き方』の聖徒である民に与えられる。その御国は永遠の国。全ての主権は彼らに仕え、服従する(7:27)」。神の民、イスラエルの民は千年王国において、世界の支配者になることが預言されています。ダニエルはこの書の主役です。彼は捕囚地でバビロンのネブカゼネザル王によって選ばれた王に仕えるにふさわしい優秀な人物です(1:3~4参照)。ダニエルは聖なる神の霊を宿す者として、また全ての夢と幻を解き明かす能力を持つものとしてダニエル書に現れます。その力によって、王たちの信頼を勝ち取り、高い地位を与えられています(1章~6章)。ダニエルは他の預言者が神の召命を受けて福音宣教に努めたのとは違って、神にではなくネブカゼネザル王によって選ばれた捕囚民の一人です。王族か貴族の出身(1:3)のようです。「ダリヨスの治世とペルシャ人クロス王の時代に栄えた(6:28)」のです。彼の他に3人の仲間(ハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤ)も優秀な人材としてダニエルと共に王によって選ばれています。
 バビロンの捕囚民
 このように「バビロンの捕囚民はイスラエルの民のうち主だったもの」とあるように、彼らは捕囚地において必ずしも奴隷状態にあったわけでは無かったようです。自分の専門分野を生かしそれなりの地位につき安定した生活を送っていたようです。その証拠にペルシャのクロス王によって、祖国への帰還が許された時にも、祖国に帰還せず、バビロンに残っていた者が多くいたと云われています。ダニエルもその一人です。
ダニエル書は12章からなりその内容から2つに分けられます。
1、バビロンにおけるダニエルと仲間たちの受難と救済、そして夢解き(1~6章)。
2、ダニエルに啓示された終末の預言(7~12章)。

1、バビロンにおけるダニエルと仲間たちの受難と救済、そして夢解き(1~6章)。

注①ダニエルたちは自らに与えられた王からの飲食物を穢れたものとして、これを拒否。野菜と水だけを要求する。ネブカデネザル王は試用期間を設ける。結果、正しさが証明され、王の飲食物は中止される。
注②ネブカデネザル王は、金の偶像を作り、これを我と考えて敬い、ひれ伏せと、民に命じる。しかし、ダニエルの3人の仲間はこれを拒否する。王は怒り、彼らを猛火の炉の中に投げ込む。御使いが現れ、彼らを救う。王は3人の信仰を認め、彼らに高い地位を与える。この章にはダニエルは登場しない。
注③メヂアの王ダリヨスは法令を作り、これを守らない者は獅子の穴に投げ込むと宣言する。王の信任の厚いダニエルに嫉妬し、高官たちは正しい神を敬い、ひれ伏すダニエルを王に讒訴する。王は自分の法令を犯したものを救う事が出来ずダニエルを獅子の穴に投げ込む。しかし、神の御使いが現れ獅子の口をふさいだのでダニエルは食い殺されること無く救われる。
注④ネブカデネザル王は「大きな像」の夢を見る。その夢の解明をダニエルに問う。その像は、下表のようなものであった。足の部分は体を支える基礎、この基礎が脆かったと言う事は、これらの国が正しい神を斥け、異教の神を信じていたということを現している。国の基礎は正しい神によって、確立されねばならない。それ故、滅ぼされる運命にある、と夢解きをする。ダニエルは王に本来の神を敬い永遠に打ち砕かれることの無い国を打ち建てるようにと進言する。
注⑤ネブカゼネザル王は、大木の夢を見る。その夢解きをダニエルに命じる。大木とは王のこと。その治世は栄え、他に並ぶものは無い。その主権は地の果てにまで及んでいた。この時、御使いが現れ「この大木を切り倒せ」。「しかしその根株は残せ」「この根株を天の露に濡れさせ、7つの時が通り過ぎるまで野の獣と草を分け合うようにせよ」と叫ぶ。これが夢の意味であり、夢解きを必要とする。この夢は王の国が倒れ、試練にさらされることを意味している。この試練を乗り越えて、7つの時が過ぎた時、王は救われる。しかし、その為には神の教えを受け入れ、守り、正しい行いによって「あなたの咎を除くならば、あなたの繁栄は末永く続くでしょう」とダニエルは王に言う。しかし、その繁栄によって高慢となった王は「この繁栄はわが力によるもの」とダニエルの進言を斥ける。この瞬間、天から裁きが下り、王は罪に服す。そしてその裁きの期間が終わった時、ネブカデネザル王には理性が戻り、王位は確立し、以前にもまして大いなる者となった。王は神を敬う。
注⑥ ネブカデネザル王の息子ペルシャツアル王の夢解きをダニエルは命じられる。それは、メネ、メネ、テケル・パルシンと云う言葉であり、その意味を王は、ダニエルに問う。ダニエルは応えて曰く「あなたの国は分割され、メディヤとペルシャに与えられる」と。その夜、王は暗殺され、バビロンは滅びメディヤのダリオス王が後を継いだ。
 3章と6章の共通点

 言 葉
 根株:大木が切り倒されても、根株さえ残っていれば、そこから芽が出、成長し美しい花を咲かすことから、ネブカゼネザル王の心の奥底に潜在する隠された信仰心を指します。これがあったからこそ、おごり高ぶっていたネブカゼネザル王を主が打った時へりくだる者となった(理性が戻る)のです。
「いと高き方(神)」の主権は、地上の主権に勝るのです。
信仰の素とも捉えることが出来ます。
 法制度:バビロンの法制度とメディヤ・ペルシャの法制度との違いは、一方が絶対君主制であり、他方が立憲君主制だと云う事です。ペルシャのネブカデネザル王は法そのものです。しかし、ダリヨス王は君主といえども法に従う義務があります。しかも自分の作った法となればなおさらです。ダリヨス王は、ダニエルを個人的には救済したいと思いながらも、法に縛られてそれをすることが出来なかったのです。
平成29年6月13日(火) 報告者 守武 戢 楽庵会