日常一般

日常生活にはびこる誤解、誤りを正す。

ゼカリヤ書1 この愛すべき都

2018年10月09日 | Weblog
  ゼカリヤ書 1 エルサレム:この愛すべき都
 
はじめに
 ゼカリヤ書は12の小預言書のうち11番目に位置し、ホセヤ書につぐ2番目に長い書である(14章211節)。第1ゼカリヤ(1~8章)と第2ゼカリヤ(9~14章)の2部に分かれる。今回はⅠ部に限ってレポートする。
 作者:イドの子、ベレクヤの子、預言者ゼカリヤ(1:1)。ハガイと共に神殿再建に関わり、ハガイの没後も、彼の後を受けて預言活動を行い神殿再建に寄与した人物。
 執筆の年代:BC520~BC470年と言われている。活動の開始はダリヨス1世の治世、第2年目の第8の月(10月から11月にかけて)(!:1)である。これはハガイが預言活動を終える直前である。
 主題:ゼカリヤの幻と託宣の主題は、基本的にハガイによる預言活動を受け継ぐもので、その中心は神殿再建にある。幻の本質は復興の幻だからである。
 背信の民イスラエルを前にして主は言う「わたしに帰れ ――万軍の主のみつげ―― そうすれば、わたしもあなた方に帰る(1:3参照)」。今や大いなる救いの日は近づいている。メシア再臨を前にして神の民イスラエルは、主の前に整えられ、悔い改め、主に立ち返る必要があった。
 イスラエルは、本来、全世界に主の栄光を輝かすために主によって選ばれ、世界の中心におかれた神の民である。神殿の再建はイスラエル民族の霊的回復を現している。神殿再建以前の背信の民を神殿再建に導いたものは人間的な力によるのではなく、「権力によらず、能力によらず、わたし(主)の霊によって(4:6参照)」なされたのである(ハガイ書1:12~15参照)」、と主は言う。
 ゼカリヤに啓示された8つの幻の本質は、神殿(礎)再建を通じて神の民イスラエルに示された霊的回復である。神殿再建以前は背信の民に対する「さばき」が再建以後は回復が語られている。神殿再建を主は背信の民イスラエルの悔い改めと主への立ち帰りの証と見做したのである。
 神殿再建の結果見えてくるものとは何か。―――神との契約の成就である。「わたしに対して全きものであるなら汝に大地を与え子々孫々(永遠)の増大繁栄を保障しよう(創世記17章参照)」と主はイスラエルに保障した。神のご計画の成就を預言することが「ゼカリヤ書」の最終的な目的である。このように「ゼカリヤ書は」は、終末論的視点から解釈される必要がある。

 ゼカリヤ書の内容構成
第Ⅰゼカリヤ(1:1~8:23)
序(1~6)
第Ⅰ部、ゼカリヤが見た8つの幻の告知(1:7~6:8)
第2部、大祭司ヨシヤへの戴冠を命じる主の言葉(6:9~15)
第3部、「さばき」の成就とシオンの回復についての預言(7:1~8:23)

 ゼカリヤ書の内容
 第Ⅰゼカリヤ (1~8章)
 主による背信の民に対する怒りと悔い改めを促す呼びかけ。その後に8つの幻と、「若枝」(6:12)に関する預言が続く。ゼカリヤは幻を見て常に問う「主よ、これは何ですか」主は逆に問う「これが何だか知らないのか」ゼカリヤは応える「主よ、知りません」この時、主は幻の本質は「復興の幻」であると証する。この後、「真の断食」とは何かが続く(7章~8章)。
幻に関する記述 8つの幻
 第Ⅰの幻:ミルトスの茂みの中に立つ神の馬たちが語られる。その馬(幻)は諸国を巡回する馬である。その後に、この幻は、エルサレムに憐れみを示し、神殿が再建されるという託宣をもって終わる(1:18~17)。諸国に対する主の怒り1。
 第2の幻:ユダを追い散らした4本の角(バビロン、メディア・ペルシャ、ギリシャ、ローマ)が4人の職人によって投げうたれる(バビロンを滅ぼした「クロス」、ペルシャを滅ぼした「アレクサンドロス」、そしてギリシャのセレウコス王朝のアンティオコスを打ち滅ぼした「ローマの将軍」、そして最後は終末において反メシヤ(ローマ)を滅ぼすキリスト・イエスの4人)(1:18~21)。先が後を滅ぼし、最終的には反ユダはメシアに滅ぼされ、新しいエルサレムが生まれる。諸国に対する主の怒り2.
 第3の幻:測り縄を持った若者がエルサレムを測る用意をするが、一人の御使いはエルサレムが更に拡大することや、主なる神によって守護されると預言する(わたしは火の城壁となる)。(2:1~13)。主の守り。
 第4の幻:大祭司ヨシュアの穢れた衣服が取り去られ、礼服に取り変えられる(3:1~10)「見よ、わたしは、あなたの不義を取り除いた。あなたに礼服を着せよう」(3:4)。彼が神殿を守る者として聖別される。1つの若枝の出現。主の義認。
 第5の幻:ゼカリヤは、2本のオリーブの木から油の供給を受ける7つの灯皿(ともしびさら)のある金の燭台を見る。ゼルバベルは神の霊の力を借りて神殿の再建を完成させるであろう。2人の油注がれた者(4:1~14)。主による建て上げ。
 第6の幻:飛んでいく巻き物(神のトーラ)は盗みをするものや偽預言者。にとっては呪いだ。彼らはこれに照らし合わされて裁かれる(5:1~4)。主の「さばき」1。
 第7の幻:「罪悪」という名の女(偶像)がエパ升の中に閉じ込められシヌアル(バビロンの地)に運ばれる。これは異教の神がイスラエルの地から運び去られることを意味している(5:5~11)。主の「さばき」2
 第8の幻:二つの青銅の山の間から4台の戦車が出てきて主の前に立った後、全地を動き回る。「若枝」という名の人が出てきて、主の神殿を建て直す。彼は尊厳を帯び、その王座について支配する。ヨシュアの冠(6:1~15)。主の来臨。
幻の中で触れられている象徴は何を意味しているのか。多様な解釈が可能である。メシア預言であるとも言えるが、幻全体の使信は、エルサレムの神殿再建がエルサレムの選びと再建と回復にあると言えるであろう。
 
 真の断食とは
 1章から6章までが幻繋がりであるなら、7章と8章も繋がった章と考えることが出来る。7章は神殿(礎)再建以前が描かれ、8章は以後が描かれている。
 7章は神殿再建以前に行われた、形骸化した断食に対する主の怒りから始まる。この背信の民に対し主は、さばきを下す。民は散らされ、エルサレムは荒野となる。これに対して、8章は再建以後である。再建はイスラエルの民の悔い改めと主への立ち返りの証である。主は喜び、大いなる恵みをイスラエルの民に与える。断食の日は「贖罪の日」となり、この嘆きの日は逆転して「ユダの家にとっては楽しみとなり、喜びとなり、嬉しい例祭となる(8:19参照)」。
 7章では真の断食とは何かが問われている。先の章で、幻を見たゼカリヤが「これは何ですか」と問い、神がこれに応じたように「断食」に関する質問から始まり主の厳しい応答で終わる。神殿再建以後に行われた断食こそ真の断食となる。
 断食とは、単に食を断つ行為を指すのではなく、肉の欲望を断ち、自らを無にして主に近づくことを意味している。十戒の後半部分は「人を愛すること」の戒めである。7章はこの戒めに生きる象徴的行為として断食を挙げている。「万軍の主はこう仰せられる『正しい裁きを行い、互いに誠実を尽し、あわれみ合え、やもめ、みなしご、在留異邦人、貧しい者を虐げるな、互いに心の中に悪をたくらむな(7:9~10)。』」と。これこそ主が求め喜ばれる断食である。
 この愛の結果が8章で語られる。主は言う「あなたがたの先祖が、わたしを怒らせた時、わたしはあなた方に災いを下そうと考えた―そしてわたしは思い直さなかった、しかし、このころ(神殿建設以降)わたしはエルサレムとユダの家に幸いを下そうと考えている(8:14~15)」と。7章の終りに主はエルサレムを「この慕しい国(7:14)」と言っているように「わたしはシオンをねたむほど激しく愛し、ひどい憤りでこれをねたむ(8:2)」と言う。主は自分以外の神を愛する背信の民をねたみ憎むほどに愛しているのである。だから、この背信の民が神殿を再建した時、それを信仰回復の証しと考え喜び歓迎し「彼らはわたしの民となり、わたしは真実と正義をもって彼らの神となる(8:8)」と宣言したのである。このように、8章では神殿再建によって新しい時代を迎えようとしている神の民イスラエルのために将来における励ましとして、主がなそうとしておられる回復のご計画のビジョンを預言したのである。
 この結果、エルサレムは真実の町と呼ばれ、万軍の主の山シオンは聖なる山と呼ばれるようになる。エルサレムの広場には老いも若きも、男も女も、大人も幼な児も、共に集い、共に楽しむようになる。「平安の種がまかれ、ぶどうの木は実を結び、地は産物を出し、天は露を降らすからだ。わたしはこの民の残りの者に、これら全てを継がせよう(8:12)」。主と人との契約「わたしの前で全き者であるなら、汝に大地を与え、子々孫々の増大繁栄を保証しよう(永遠の保障)」が実現するのである。さらに「再び国々の民と多くの町々の住民が(エルサレムに)やってくる。多くの国の民、強い国々がエルサレムで万軍の主を尋ね求め主の恵みを請うために来よう。神があなた方と共におられると聞いたからだ(8:22~23参照)」。イスラエルから全世界へ。この時、主のご計画は完成に向かって突き進む。

 イスラエルにおける儀式としての断食の日
 断食の儀式とは、過去の悲しい出来事(バビロンによるエルサレムの滅亡)を自分たちの罪ゆえと嘆き、悲しみ、生贄を捧げ、悔い改めて、身を戒める「贖罪の日」に行われる儀式を指す。
 その儀式を挙げると(8:14参照)。
 第10の月(テベット)の10日
 BC588年エルサレムがバビロンによって包囲された日(エレミヤ39:1、52:4)
 第4の月(タンムズ)の9日
BC586年エルサレムの城壁がバビロンによって破壊された日(エレミヤ39:2)
 第5の月(アブ)の10日
BC586年神殿がバビロンによって焼失した日(エレミヤ52:12~14)
 第7の月(ティシュリ)の9日
BC586年総督ゲダルヤが暗殺された日(エレミヤ41:1~3)
平成30年9月11日(火)報告者 守武 戢 楽庵会