ぼうや 大人になるとね
目には見えない
不思議なツノが生えてくるのさ
北極の 空の辺りには
星の光を組んで作られた
ちいさなあばらやがあって
水晶の風のようなおひげの
美しい冬のおじいさまが住んでいらっしゃる
おじいさまは
毎年冬のきわみの日が近くなると
歌うブナの樹のような声で
おっしゃるのだ
わが子や つまや こいびとや
ちちははや そのほかの
たいせつな人の
ひとりでもいるものは
聞くとよい
そのひとたちに 心よりの
贈り物をするように
まるで 発芽の種のように
やわらかな そのツノは
耳に聞こえぬその声を
感じるためのアンテナなのさ
だから 人々は
その日が近くなると そわそわしながら
赤や緑や金のリボンで飾りつけた
ちいさな贈り物を用意する
ほら ふとんの中にいると
じぶんの熱で ほかほかと温かい
それと同じように
たいせつな人のことを思うと
自分の愛で 心が 温かいんだ
おじいさまは みなの心を温めたいのだ
冬のおじいさま だからこそ
ぼうや
子供にしかわからないことがあるように
大人にならないと
わからないこともあるんだよ
(2002年11月ちこり26号、詩)