水色の空を
羊羹のように切り分ける
黒い電線の下で
わたしは黄色い旗を持って立っている
古い町の古い小学校へゆく
子供たち
交差点をちらほらと横切る
おはよう おはよう
気をつけて いってらっしゃい
若葉色の ちいさなあまがえるのように
かわいらしい君たち
わたしは君たちをみると
花束のように ぎゅっと
抱きしめたくなる程なのだが
君たちときたら もう
胸の中の重い虚ろに
じりじりあぶられているような
不安な瞳で
足早に行き過ぎるのだから
何も聞こえなかったふりさえして
おはよう おはよう
気をつけて いってらっしゃい
わたしの言葉が
君たちの虚ろに届くのは
きっとずっと先
本当の自分を生きたいと願い始めた君の
瞳の奥が開いて
大空の光が君の魂に届いた時
その時
きっと君の中で
芽生えるものがあるように
わたしは繰り返し
種をまき続ける
おはよう おはよう
気をつけて いってらっしゃい
(2002年頃、種野思束詩集「種まく人」より)