人間は嫉妬する生き物。という前提でものを考えた方がいい。テロや戦争の根底にあるものも嫉妬。豊かで華やかな先進諸国に対する嫉妬、異文化に対する嫉妬…。嫉妬は強烈な自尊心の裏側にある。そして他者に対する恐怖感と手をつないでいる。それは人間の生命の根底に頑固に張り付いている宿命みたいなもの。だから嫉妬は悪い、というより、それをどう悪い方へ作用させないかの対策が必要ではないか。
ユーモアや愛、文学やアート、そして人々の幸せを祈る宗教などが、そこにはたせる重要な役割があると思う。要するに、人間と人間社会に関する正しい教養が、嫉妬の良い御者になり得るものだと思う。だから人は学ばなければならない。怠惰にふけっていると、嫉妬に飲み込まれて自分を見失う。その災禍たるや、皆さんもご存じのとおりです。
(2003年11月ちこり29号、ミニエッセイ)