お日さま
わたしは 冬のバラです
何を好んで 冬に咲くのか
自分にも よくわかりません
でも ようやく今
咲くことができました
花びらの いちばん外側が
黒ずんで 縮れているのは
何度も 雨に当たったからです
冬の雨はまるで氷の針のようで
とても冷たく 痛く
やわらかな花びらが傷ついてしまうのは
仕方のないことでした
本当は
少しでいいから
だれか傘をさしてくれないかしら
冷たい風からわたしを守る
かこいをたててくれないかしら
と
思ったことはありました
いいえ 何度もありました
だって
冬の冷たい雨や風は
とてもつらかったのです
苦しかったのです
お日さまの光がひとすじ さしこんで
時をつげる 風の小さなささやきが
聞こえた朝
わたしは 咲きました
外側は傷んでしまったけれど
ほら 中はまだきれいです
雨にも風にも がまんして
ずっと守ってきたのです
だってお日さまに
少しでもきれいなわたしを
見てほしかったから
お日さま
わたしは
あわいぴんくの
小さなバラです
(2000年3月ちこり18号、詩)