世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

奇跡

2015-09-06 05:02:16 | ちこりの花束

 先日、犬の散歩の途中でよく寄る神社で、古いクモの巣にかかってあばれているセミを見つけました。その様子があんまり必死だったので、私はそっと近づくと、セミをクモの巣からとり、頭に絡みついていた糸も取ってやって、空に放してやりました。
 数日後、また同じ神社に行った時の事です。私が裏の祠の前で手を合わせていると、すぐそばでセミが鳴き始めました。見ると、手を伸ばせば届きそうな木の幹に、この間とそっくりなセミがとまっていました。ツクツクオーシ、ツクツクオーシ……、小さなお尻を必死に膨らませたり縮ませたりしながら、一生懸命鳴いています。そしてそのセミは、私がお祈りしている間中、ずっと鳴きつづけていたのです。
 もしかしたらお礼を言いに来てくれたんでしょうか? 何だか場所が場所だけに、不思議な感じがしました。こんなのも「奇跡」って言えるかな?


(1999年11月ちこり17号、ミニエッセイ)




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