先日、犬の散歩の途中でよく寄る神社で、古いクモの巣にかかってあばれているセミを見つけました。その様子があんまり必死だったので、私はそっと近づくと、セミをクモの巣からとり、頭に絡みついていた糸も取ってやって、空に放してやりました。
数日後、また同じ神社に行った時の事です。私が裏の祠の前で手を合わせていると、すぐそばでセミが鳴き始めました。見ると、手を伸ばせば届きそうな木の幹に、この間とそっくりなセミがとまっていました。ツクツクオーシ、ツクツクオーシ……、小さなお尻を必死に膨らませたり縮ませたりしながら、一生懸命鳴いています。そしてそのセミは、私がお祈りしている間中、ずっと鳴きつづけていたのです。
もしかしたらお礼を言いに来てくれたんでしょうか? 何だか場所が場所だけに、不思議な感じがしました。こんなのも「奇跡」って言えるかな?
(1999年11月ちこり17号、ミニエッセイ)