フランシスコ・デ・ゴヤ、18世紀スペイン、ロマン主義。
華やかな帽子やドレスや、自分を大きく見せる髪形などが、少々ちぐはぐに見えるのは、本人の目が強いからだ。自分をよく見せる必要などないのに、よく見せようとしているからである。眼光と風貌があっているので、本物の女性だが、当時の閉鎖的社会の中で、個性のすり減ってしまった魂の姿が見える。この女性は自分を生かすために自分を殺さざるを得ないのだ。派手なドレスや髪形は、それがないと自分に耐えられない人間なのだという、人間への侮辱でもある。馬鹿が支配する厳しい社会の中を生きる、本当の人間の一つの姿であると言える。