世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

悲劇の詩神としてのシドンズ夫人

2016-06-05 04:23:16 | 霧の風景


ジョシュア・レイノルズ、18世紀イギリス、ロココ。

イギリス絵画には、こういう欺瞞を許すという伝統がある。シドンズ夫人がどういう女性であるか知らないが、この程度で詩神、ミューズを名乗ることを恥ずかしいと思わないことが恥ずかしい。レイノルズは、嘘で作った人間の表面的価値を、重要なものとして高い技術で画面に表現するが、それは芸術家としては根本的な矛盾をはらむ苦しい仕事だ。ゆえに彼の作品自体が、欺瞞に満ちた微妙なものになる。美しく見えるだけに、それは見る者の心を苦しめる。こうしたイギリス絵画の世界は、やがてオランピアを描いたマネの出現によって、一気に色あせるのである。






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