サルヴァドール・ダリ、20世紀スペイン、シュルレアリスム。
これは恐ろしい女性像である。髪を流行の形に整え、センスのいい上等な服をまとった女性の中には、誰もいない。誰もいないのに、形だけはある。ダリは悪魔に魂を売った画家だ。彼は芸術家としてのステータスを得る代わりに、馬鹿の望む通りの絵を描いたのである。美しい見栄えのみを描いて、中身は描かなかった。中身を描けば嘘がばれるからだ。その背景には草木も水もない、荒涼という言葉さえ寒い世界が広がり、女性の姿はそれに幽霊のように溶けている。人類の馬鹿が求め続けてきた世界は、こういうものかという絵である。