アーニョロ・ブロンツィーノ、16世紀イタリア、マニエリスム。
これは盗んできた美が崩れてきたという絵である。モデルは40代以降の女性であろう。美しかった若いころの美が失われてきているが、これは老いてそれが衰えてきたのではない。歪んできたのだよ。偽物の人間は老いてくると、盗んできた美が腐ってくるのだ。美しい衣装でごまかしてはいるが、目が弱いのは、本霊がそろそろ自分の人生から降りようとしているからだ。美しくなくなることによって、人に馬鹿にされることが怖いのだ。偽物の美女がいずれどういうことになるかということを、予感させる絵である。