リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

フロロカーボン弦

2013年11月23日 18時52分41秒 | 音楽系
ふと思い立って呉羽のサイトをのぞいてみました。フロロカーボンの釣り糸を製造している会社です。もう20年近く前になるでしょうか、フロロカーボンの釣り糸を1~4コースくらいまで使用していた時期がありました。フロロカーボンという素材の弦(釣り糸をそのまま使っているだけですが)はとても音量がありはっきりとした音が出るのですが、高い音がキンキンしすぎるのでいつしか使用をやめていました。現在リュート奏者でフロロカーボン弦を使っている人は少ないと思いますが、先日久しぶりに会いました某リュート奏者はヴィウェラにカーボン弦を使っていました。

私が呉羽のサイトをのぞいたのは太いカーボン弦(呉羽としては釣り糸ですが)はどのくらいまであるのかを知りたかったからです。以前使っていた頃は20号くらいが一番太い弦で釣具屋に20号を買いに行くといつも「大物を釣られるんですねぇ」なんて言われました。

サイトを見てみて驚きました。150号まであるんですね。これは全然知りませんでした。それらは鮪を釣るためのものでその名も「万鮪(まんゆう)」(笑)他にも二重構造になっているものもあり、この20年間でものすごい進歩、展開を遂げているんですねぇ。さすがニッポンの会社です。

超太い弦があるということは、バス弦に使えるわけです。ポール・バイヤー氏のソフトで計算してみましたら、A=440ヘルツの弦長57cmのルネサンスリュートで、5コースが30号(2.57kg)、6コースが60号(2.82kg))、7コース(F,D兼用で、Fにしたときで3.03kg)で80号が使えます。まるでリュートのことを考えてあるかのようなラインナップです。呉羽の社員の中にきっとリュートを弾く人がいるに違いありません。

カーボン弦は素材的には金属巻き弦を除けば最も質量のある素材で、たとえば呉羽万鮪30号直径0.910mmを5コース(C,440HZ)に張ったときと同じ張力を得ようとすると、ナイロンでは1.167mm、ナイルガットで1.064mm、ガットで1.044mmの太さが必要です。

ルネサンスリュートの5コースはどういう弦を張るかという点でなかなか難しい場所で、巻き弦にするとギンギンなりすぎるし、ナイロンだと太くなりすぎてうまく振動しないし、ガットにするにしてもまだ今ひとつです。私はプレーンガットの替わりにガムート社のギンプ弦を5コースに使っていますが、まずまずではありますがもうちょいとがんばってほしいなぁというのが正直なところです。ギンプ弦はお値段も高いし。

カーボンだとこれらの素材に比べると相当細いので、結構行けるんじゃないかと思い、さっそくアマゾンに発注、夜注文したんですが翌日の9時過ぎに到着しました。うーんさすがアマゾンです。



で早速張ってみましたがこれがなかなか行けます。お値段もギンプ弦の五十分の一だし。(笑)よしこれなら6コースも7コースもということでそれぞれ60号と80号を注文して張ってみました。はい、ばっちりです。ギンプ弦よりいいです。26日の幸田町のコンサートはこれで決まりです。1~3コースと6,7コースのオクターブ弦ははガムートのガット、4コースはナイルガット(ここはカーボンの置き換えも可能かも)ですが、とてもバランスがよく、オールガットのときの古雅な感じは全然損なわれることはありません。

60号とか80号とかの太いカーボン弦は昔はなかった(知らなかっただけなのかも知れませんが)のでバス弦にカーボンというのは考えたこともなかったですが、ガット弦風の音がしてとてもいい感じです。なによりお値段が安い、といってもそれは1本単位にすると安いんですが、25mとか30mといった単位で買わなければならないので、実際は結構費用がかさみます。なにしろ鮪をつるんですから1m単位で売っているわけがありません。バロック・リュートにも試してみる価値はありますね。