リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

プレリュード、フーガ、アレグロ(BWV998)その1

2016年04月07日 14時43分33秒 | 音楽系
今度のリサイタルで、プレリュード、フーガ、アレグロを弾きますが、この曲を演奏するのは久しぶりです。多分30年以上前のことだと思います。その頃は原調と同じ変ホ長調で弾いていました。

自筆譜の冒頭には、「リュートまたはチェンバロのためのプレリュード」と書かれていますので、リュートのために書かれたように思えますが、実際には、弾けることは弾けますが、とても弾きにくくさらに何か所はどうしてもそのままでは音が出せない箇所も出てきます。

調弦もとても面倒なことに、6コースと13コースを半音下げるというようなことも必要です。(変ホ長調なので、もちろん9コースはミの♭、12コースはシの♭にしています)6コースと13コースを半音下げないでも演奏可能ですが、そうするとさらに弾きにくい箇所が増えます。

原曲のままでは音が出ないところは、オクターブ下げたりして「編曲」をしていくわけですが、リュートのために書かれた曲をリュート用に「編曲」するというのもおかしな話です。実はこの曲はラウテンヴェルク(リュート・チェンバロ)といって、鍵盤楽器ですがガット弦を張ってリュートのような音が出る楽器のために作られたものです。チェンバロの人に言わせるとこの曲は音がスカスカで技術的にはそんなに難しくないそうです。一方リュート「編曲」では最高の技術が要求されます。これらの事実からすると、表題の「リュートまたはチェンバロ・・・」というのはラウテンヴェルク用に書いたということのようです。