リュートで通奏低音を弾くのは多分鍵盤楽器の場合より楽器の相対的な技術水準は高いと思います。もう少しわかりやすく言うと、鍵盤楽器だとそう技術的な問題がない部分でもリュートではヘタすると「超難曲」みたいになってしまうことが結構出て来るということです。
これは無理をした場合ですからもちろんそういう事態を避けるようにリアライズ(低音を見て実際の和音の流れを弾く)しなければなりません。和音をきちんと押さえられるとかレガートに和音進行できるかとか(左手)、きちんとバランスの取れた和音を弾けるか(右手)といったことができないうちは通奏低音はなかなか難しいでしょう。
実際の例を見てみましょう。
テレマンのトリオです。オリジナルの楽譜はダルムシュタットの図書館にあり、オリジナルもスコアで書かれています。ダルムシュタットはフランクフルトのすぐ南に位置する中都市で、人口は桑名市(14万人くらい)より少し多い16万人くらいの街です。
譜例
上の楽譜はオリジナルから私がSibeliusで清書したものですが、オリジナルに書かれている内容はこれだけです。通奏低音のパートは一番下の楽譜ですが、これをどう弾いていくかはいろんな可能性があります。
チェロで弾く場合であればこの書かれている音だけを弾くことになりますが、音楽的にはそれで必要充分という感じにもなります。リュートで弾く場合だと音が持続しないので適宜和音を補充して弾くことが多くなります。
たとえばこんな風に。
下から2段目の楽譜も併せて弾きます。赤い音符は弾かなくてもいいかも知れません。そもそも全てバスの上に和音が乗っていればいいというものでもありません。