大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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決算書に見えてこない大田区の財政の不安要因「蒲田開発」:決算特別委員会から

2010年10月07日 | ├行政システム・公共調達

昨年の決算特別委員会で公有財産の有効活用という視点から、大田区の不動産活用の問題点について取り上げました。
 目的、価格、購入条件、土地開発公社を使った購入方法などの側面から不透明で非経済的な土地購入の実態を改善するよう提案しました。
 
 1年が経過しましたが、大田区の土地購入は改善したといえるでしょうか。

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昨年の10月、蒲田開発は大田区の依頼を受けて六郷の土地を購入しました。
 
 区は、大田区が50%以上出資しているものの一民間会社である蒲田開発に、いわゆる「先行取得」と言って大田区が買い戻すからと買わせたものです。
 
 土地開発公社が先行取得できるのは、「公有地拡大法」(10条から)に基づき、また、議決によって設立しているからであると理解ししています

 しかし、何ら法的根拠を持たない「蒲田開発」に土地を買わせることは、

①購入限度額を持たないため、区財政を圧迫する恐れがある。
②議決を経ていないため行政の恣意的な購入を抑止できない
③購入価格の正当性を担保できない

などの点から問題です。

 昨年より大田区は、「蒲田開発」との人的関係を強めており、区長以下区幹部が「蒲田開発」と一体となって土地購入をはじめ様々な契約を行う構図ができあがています。

 決算特別委員会では、
①大田区が3セクである「蒲田開発」を使い土地を先行取得できる法的根拠。
②土地購入が失敗に終わった場合、責任を負うのはだれか

について質問しました。

 区からは、法的根拠はなく、債務負担行為という将来大田区が土地購入を負担することを議決したから良いのである。責任は議決した議会にあり区は関係ない。としか受け取れない答弁でした。

 バブル期の不動産高騰による影響を避けるためできた「先行取得」という仕組みの中での「土地開発公社」ですが、その役割は終わったといってよく、公社を解散させようというのが時代の大きな流れです。

 高コストで透明性に欠ける土地開発公社の存在が問題になっている時代に、土地開発公社であれば、減免される不動産取得税や固定資産税も支払わなければならない民間企業に大田区が土地を先行取得させるメリットは皆無です。

 区が「蒲田開発」を使い土地を購入する意味は一体何なのでしょうか。

 以下、質問の全文↓
 
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奈須りえです。
 昨年の10月、蒲田開発は大田区の依頼を受けて六郷の土地を購入しました。

 いわゆる先行取得というものです。

 通常、先行取得は土地開発公社が行いますが、区は、定期借地権がついているため公社で購入することは不可能で蒲田開発に購入依頼したと説明しています。

 私自身は、再三申し上げますとおり、土地開発公社の役割は終わっており、廃止すべきだという考えを持っていますが、土地開発公社の先行取得=つまり、自治体から購入依頼を受け、議決を待たずに土地を購入することは、土地開発公社が「公有地拡大法」に基づき議決によって設立しているからであると理解ししています。

 しかし、六郷の土地購入は、大田区の土地取得依頼はあるものの、蒲田開発という株式会社と前所有者との民民の契約でしかありません。

 経理管財課から見せていただいたこの土地の契約書は極めて簡単なもので、大田区の買戻し予定日は記載されているものの、土地購入に関わる区との関係はあいまいです。

 大田区の買い戻しが法的に有効であるかどうかわかりません。

 そこで伺います。

 蒲田開発が先行取得できる法的根拠はなんでしょうか。単なる民民の契約に過ぎないのではないでしょうか。大田区が買い戻さなければならない法的根拠は存在しますか?

 しかも買戻し予定日は平成28年6月であり来年の区長選で区長以下執行部が変われば方針の変更もありうるという極めてリスクの高い内容です。

 地価の高騰が著しかったバブル期には一定の役割をもっていた公社ですが、地価も安値で安定し、あるいは下がり傾向にある現在、また今後の人口減少を考えれば、公社の役割は終わったといってよく、土地開発公社を廃止する動きは少しずつですが出てきています。

 そうした中で、公社の向こうに更に第二公社ともいうべき存在を作ることは時代の流れに大きく逆行しています。

 ただでさえ、公社の先行取得が議決というチェックをすり抜け、不透明でコスト意識に欠けた購入を促していると言われているにも関わらず、蒲田開発に先買いを認めれば区が大きなリスクを抱えることになります。実際、六郷の土地を購入したことで、直買いであれば9620万円という公社が購入するなら支払わなくてよかった手数料、不動産取得税、金利、固定資産税を負担することになっているのです。



 今日は、決算書からは見えない、あるいは、見えにくい大田区が抱える大田区財政へのマイナス要因、不安材料のなかから特に「蒲田開発事業株式会社」に焦点をあてそれに係る問題を取り上げていきます。

 ぜひ、皆さんもこの問題を共有していただきたいと思います。

 ここで最近の「蒲田開発」の一連の動きをおさらいしたいと思います。

一.昨年第三回定例会において大田区現役職員を派遣できるよう条例改正

一.大田区経理管財課に民間人材活用のため採用した任期付き職員が3年の任期のところ任期満了をまたず2年で辞職し今年4月から土地開発公社に勤務。同時に蒲田開発兼務。給与は土地開発公社が100%負担。

一.今年5月26日まちづくり系副区長ポストだった社長を秋山副区長から野田副区長に交代。新たに土地契約所管部長である森総務担当部長が取締役に就任。

一.5月に1名。7月に1名。大田区退職職員を採用。

一.8月「大田区と蒲田開発事業株式会社との共同に関する基本協定」締結

一.9月「蒲田駅周辺地区再開発事業化に係る調査」を9470万円で委託。



 「蒲田開発事業株式会社」は資本金はわずか1500万円。そのうち56.67%850万円を大田区が出資する外郭団体です。この一連の流れをみていると、最近の社長交代や大田区からの取締役派遣、土地開発公社との兼務職員の配置などにより大田区と人的関係をさらに密なものに構築してきていることがわかります。

 8月には「協働による総合的なまちづくりの推進」という曖昧な目的のために大田区と基本協定を締結しています。委員会で確認しましたが、この協定書には法的拘束力は何もないそうです。法的拘束力のない協定を締結し、これをお墨付きに蒲田開発に何かやらせるのだろうと委員会で指摘したところ、予想が的中しました。

 その法的拘束力の無い協定を随意契約の理由に、区は、9月15日に「蒲田駅周辺再開発事業化に係る調査」9470万円を蒲田開発に委託しているのです。

 意思決定を行う発注者が区長ならそれを受ける蒲田開発の社長は区長の意を汲む副区長。しかも発注側である大田区の契約担当部長が蒲田開発の取締役を兼務しています。そして実質、蒲田開発の事務を執るのは昨年までの土地購入担当課長で土地開発公社と兼務。あうんの呼吸で様々な契約決定が行われるであろうことが見えてきます。そしてそれを大義名分化するためにわざわざ協定を結び、本来公募で行うべきところ、競争性の無い随意契約で蒲田開発に蒲田グランドデザインに描かれている再開発を実現するための意向調査を行わせています。

 大田区が、蒲田開発に依頼したのは、地権者の意向調査です。再開発をする意思があるか、土地を売ってもよいかと聞いていく中で、今ならいくらで売ると言われ買ってしまうことは無いのでしょうか。

 六郷の土地は、定期借地権がついていたため公社で購入することができないから蒲田開発で購入したと説明をうけています。定期借地権のつかない部分を先に購入し、定期借地権が終了してから取得するのでよかったのではないかと言ったところ、地権者が「相続のため、今、一括で売りたい」という希望に沿ったと言われました。

 同じように、店子つきのビルだが、今しか売ってもらえないからとあれもこれも買うことは無いのでしょうか。

 蒲田開発は、3億7千万円の土地購入にあたり銀行から借り入れを行っています。資本金わずか1500万円の会社に銀行が3億7千万円も貸したのは大田区が買い戻してくれると信じているからでしょう。

 このように、蒲田開発が土地を購入すれば、銀行からの借入金が増えます。法的根拠はともかく、現在の区のストーリーでは、蒲田開発が土地購入すると、大田区が返済すべき債務が増え、金利負担その他の費用が増えるということです。それでは、大田区が依頼すれば、蒲田開発はいくらでも土地を購入できるのでしょうか。はたしてそれは適当であると言えるでしょうか。

 土地開発公社には、土地購入に関わる一定の抑止力が一応備わっています。保有している土地は公開していますし、評議委員会には議員が入っている。しかも土地購入にあたりフリーハンドにならないよう債務保証限度額を定めています。

 大田区は、平成20年の第3回定例会において、土地開発公社の債務保証限度額を50億円から80億円に増額、議会の議決を経ない形での土地購入可能限度額を拡大しています。しかし、これも、公社が勝手に限度額を拡大することはできず、議決を経て増額したものです。しかし、それに伴い、銀行への償還金にあてるための区から公社への貸付金の決算は、この5年で激増しています。18年は8億6千万、19年は、2億2千万、20年は、1億4千万でしたが、債務保証限度額を増額した翌年の21年には32億9千万、22年には50億7千万円にもふくらんでいます。

 一方の、蒲田開発の購入は公社の債務保証限度額を超えた部分で、議決も何も経ていません。

 現在の、大田区の公社の土地の買い方でさえ問題があるにも関わらず、債務保証限度額と別枠を作り、議会の関与も無いフリーハンドの蒲田開発に土地購入を許して良いのでしょうか。

 そこで質問します。

 蒲田開発の勝手な購入が大田区の財政を圧迫するのではないかと危機感を覚えるのは私だけでしょうか。購入したものの、利用目的の無い土地が蒲田開発に塩漬けになることは無いのでしょうか。再開発だってできるとは限らないのです。そうなった場合にだれが購入の責任をとり赤字を補てんするのでしょうか。

 蒲田開発の土地購入の財政的裏付けは誰がどのように担保するのですか。

 
 東蒲田の体育館用地購入の訴訟では、被告にあたる区長が公金の支出をしたのは会計管理者であり区長に責任はないと言っているそうです。

 確かに会計管理者は支出の決定をしていますが、問われているのは支払い手続きの適否ではなく目的と金額の妥当性であるにも関わらず、自治体の長として判断をした区長がその責任を逃れようとしているようにも受け取れます。

 購入依頼をしながら、蒲田開発の責任にすることは無いですよね区長。


 これも再三指摘していますが、そこで重要になってくるのが価格の妥当性の確保です。

 六郷の土地は、大田区が不動産鑑定し、大田区の財産価格審議会にかけて価格を決定したそうです。財産価格審議会は、条例で「大田区の公有財産の取得に関し適正な価格を評定するため」と明記されていますので、取得依頼契約を大田区と締結し28年6月に大田区が買い戻すとは言え、大田区の税金を使い一民間企業である「蒲田開発」が購入する土地について付議することには大いに疑問が残ります。

 また、大田区は、不動産の売買に際し、不動産鑑定にかけ、財産価格審議会に付しますが、鑑定結果も財価審の議事録も非公開です。議会は不動産鑑定の結果に基づき財価審にかけたというその手続きを経たことをもって適正な価格だと信じて議決をしてきています。

 現在、東蒲田の大田体育館関連用地購入を違法として区民が大田区を提訴しています。裁判の過程で不動産鑑定書が出てきましたが、内容を聞いて驚くことが山ほどありました。

 例えば区が建物と土地を購入したマンションは、駐車場を文筆登記し第三者に売却しているため、違法建築マンションになっていました。区が提出してきた不動産鑑定では、既存不適格物権と記されていますが、違法建築であることを知りながら全く減価していません。

 議会にこのことは、全く知らされずに議案が提出されています。

 先日、委員会で違法建築物件の不動産価格について質問したところ、不動産価値は下がると答弁を頂いていますがこの物件には何か特別な減価をしない事情があったのでしょうか。

 そこでうかがいます。区は、このマンションが既存不適格であることを知っていたのですか?知らなかったのですか?また、鑑定結果を区はどれほど精査しているのですか?

 区が購入する土地でさえ、このようにあいまいでいい加減な価格の決め方であるなら、蒲田開発の土地の価格の正当性を議会はどのように判断すればよいのでしょうか。

 ただでさえ、不動産取得手数料や固定資産税など公社が購入すれば支払う必要のない費用を払わねばならないのに、さらに価格も高めはあり得ません。


 一方で、蒲田開発は連立立体事業の中の駅総合改善事業の事業主体です。

 これは連続立体事業とは別に京急蒲田駅を2階建てではなく、3階建てに高架化するための事業です。

 駅総総合事業費113億円は60%を京急、40%を公共が担います。蒲田開発は大田区をはじめとした公共分45億円と京急の預託金67.5億円の計113億円を京急に支払い、駅舎完成後には蒲田開発が駅舎の所有者となって京急から賃料を受け取る仕組みです。蒲田開発は同時に預託金を京急に返還するそうですが、賃料がいくらで預託金がいくらなのか、その目安や考え方について担当部局に尋ねましたが、国交省に確認していただくこともできず、分からないままでした。

 113億円相当の不動産が単なる補助金のトンネル会社である蒲田開発所有になることにも驚きましたが、賃料を受け取ることができることにさらに驚きました。

 賃料を受け取ったとしても、結果としては京急が支払った預託金を返還するため、蒲田開発が儲かることは無いのかもしれませんが、事業主体の筆頭株主であり駅総事業の覚書を交わした自治体が補助金のしくみさえ知らされていないのはどうしてなのでしょうか。非常に不思議な構図です。

 駅総事業はこの3階部分に補助する事業です。渋滞解消のためなら、駅は、地上から上がるだけでよく2階建てで十分だったわけですが、京急蒲田駅は周知のとおり最終的に3階建てになります。

 これまでの駅の構造であれば、京急は蒲田にノンストップ便を作ることも横浜からの乗り入れ便を作ることも不可能だったわけで、この駅総合改善事業によって京急は、ほぼ負担金0で多大な恩恵を受けています。

 一方で大田区は、この駅総合改善事業に最終的に8億円支払うことになります。

 駅総事業は「第三セクター」しか事業主体になれず、補助金が交付されないため、大田区では蒲田開発が事業主体となっています。ただでさえ第三セクターは見えにくい存在ですが、補助金の流れが複雑なため事業の全容が非常に見えにくくなり結果として事業に投入した大田区の税金に対し見合った効果の検証が甘くなっているように感じます。


 「京急蒲田駅総合改善事業補助金交付要綱」には京急蒲田駅周辺地域における利便性、安全性の向上等を図るまちづくりを推進することを目的とするとうたわれています。私には、京急が恩恵をうけただけで、要綱の目的である蒲田駅周辺地区における利便性は逆に低下したとしか思えません。大田区の永年の課題であった渋滞解消という利便性の向上は、2階建てにするだけで享受できたはずです。

 そこでうかがいます。駅総事業に区は何を期待したのでしょうか。そしてその期待は果たされたと言えるのでしょうか。駅総事業は大田区に貢献したと言えますか。

 連立立体も駅総事業も、本来、地元の交通渋滞解消からスタートしていながら、地元自治体である大田区からは非常に遠い存在に感じます。

 京急の蒲田駅ノンストップが象徴的です。

 地元自治体として、また、駅総事業主体会社の筆頭株主として、事業目的の遂行について覚書に立ち返り、国はじめ関係自治体や京急と協議を重ねていただきたいと思います。


 そうした中、高架下の利用についても協議が始まっていると聞いています。固定資産税減免により、国や都大田区が利用できるのは高架下の15%だそうです。これは当然、面積ではなく、税相当分ということですから、土地の価値に換算されるべきものだと思います。

 高架下の利用については、様々な要望がでていますが、こうした経緯を踏まえれば、地元自治体として当然主張できる、していかなければならない部分が少なくないと思います。こちらも、京急が良い場所をとり、残りを押し付けられることの無いよう、利用場所、利用できる面積については強硬に主張していくべきではないかと考えますが、いかがですか。
 


なかのひと

 


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3 コメント

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何か変ですね (木っ端役人)
2010-10-08 00:17:10
区役所のテレビで決算特別委員会を傍聴してました。
私の聞いていた限り、奈須さんの質問に対して、区役所の管理職は「蒲田開発㈱が六郷の土地を購入した法的根拠」をキッチリ答えていたように思えたのですが・・・。
奈須さんともあろう方が、それを理解できないとは思えませんし、何らかの事情があって理解できないふりをしているんでしょうか?それともご自分の主張を述べるのに熱中していて答弁をちゃんと聞いていなかったんですか?
「答弁漏れ」とかおっしゃって再質問していたようですが、何らかの思惑があって、あたかも蒲田開発㈱が(大田区役所が)違法行為とはいえないまでも脱法行為をしているという印象を聞いている方々に与えようとしているとしか思えませんでした。
まあ、その思惑は成功していたようですけれど…。
もっとも、再質問にちゃんと答えられなかった区役所の管理職も情けないですね。
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Unknown (rie)
2010-10-08 05:18:27
 うまく伝わっていなかったら私の質問の仕方が悪かったのだと思います、質問の趣旨は蒲田開発の「先行取得」の法的根拠です。「土地購入」の法的根拠ではありません。

 土地開発公社は公有地拡大法の定めに従い、議決をもって設立していますが、「蒲田開発」の先行取得にはそうした法的根拠はない筈です。

 しかも、区が最終的に根拠としたのは再質問によってでてきた「債務負担行為」の議決だけではありませんでしたか。これも、答弁の聞き漏れでしたらすみません。

 ご存知のとおり、地方自治体の議決は、法的有効性を担保するものではありません。違法な内容を議決していれば、当然その議決は、手続きが必要になるかもしれませんが無効になります。
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Unknown (木っ端役人)
2010-10-09 01:43:01
奈須さんの再質問に対する区役所の管理職の答弁にはあきれました。
ちゃんと「法的根拠」を述べればよいのに、全然関係のない区議会の議決のことしか答えていませんでしたからね。
まあ、善意に解釈すれば、議会に責任を押し付けるつもりはなかったと思いますが・・・。
それにしても、奈須さんの質問であげた数字が一桁違っていたことはどうするんですか?
少なくとも、発言の修正なり、議事録の修正を申し出たほうが良いと思いますが・・・。
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