今回の給与や報酬の改定は、引き上げですが、物価の高騰を十分反映していません。
人事委員会の決め方の問題であり、賛成しますが、ひと言申し上げます。
人事委員会勧告で、なぜ物価高騰に追いつかないかと言えば、官民格差の是正に偏重していて、物価高騰を給与に反映させる仕組みになっていないからです。
前回の改定の時も、2021年10月の企業物価指数は、前年同月比8.0%上昇と1981年1月以来40年ぶりの高い伸び率でした。
その後9.9%まであがりましたが、人事委員会は2022年の給与に物価の上昇を反映させませんでした。
今回の人事委員会の勧告に、2022年の企業物価指数が9.7と書かれていて、近年にない大幅な上昇です。
2021年の企業物価指数4.5で、いま、これだけの物価上昇ですから、
その倍近い9.7で、今後どれだけ物価があがるかと思うと本当に心配です。
本来、給与報酬改定に物価上昇分も十分に反映させるべきですが、官民格差の是正だけで、物価高騰分は入っていません。
民間給与があがったから、その分あがっただけなのです。
(それも補助金で誘導している部分も多いと思います。企業は、そうそう賃金をあげない時代になっています)
物価の上がり幅に比べ、賃金の上げ幅な小さいので、相対的に所得水準はさがっています。
職員給与は地方公務員法で、
・その職務と責任に応ずるものでなければならない、
・生計費並びに
・国および他の地方公共団体の職員並びに
・民間事業の受持者の給与
・その他の事情を考慮して定めなければならない、
と定められています。
ところが、人事委員会の勧告を読むと、官民格差の是正に重きが置かれ、
職務と責任に応じた給与、
という視点での評価が見えません。民間と同程度なら、妥当であるという決め方です。
民間給与は、株主利益の最大化という要素が、大きく影響して決まるようになっていて、雇われて働く人が自由に決めることはできません。
労働組合が、賃金交渉の重要な役割を担ってきましたが、組合の組織率も下がってきています。
過去の人事委員会の勧告で示された給与を比較すると、ほぼ一貫して双方の給与が下がり続けていて、官民格差の是正で官民の給与引き下げ合戦が行われてきたように見えます。
公務員給与が一定水準を保つことで、優秀な人材を民間がとりたければ、公務員より高い賃金を払わなければならず、民間給与引き下げの歯止めとなっていたのが公務員給与だったと思います。
その公務員給与の決め方に、重要な役割を果たしていたのが、
地方公務員法が定める報酬の決め方で「その職務と責任に応ずるものでなければならない」だったと思います。
このまま、官民格差の是正で給与を決め続ければ、官民ともに給与は下がり続け、私たち区民生活を知見で支える大切な仕事である大田区職員のなり手がいなくなっていくでしょう。
それは、区長や議員など特別職も同じだと思います。
本、議会における、大田区の国会議決を待たず補正予算を送付する議会軽視の在り方や、
公務員や首長、議員などをコストではかり、
数を減らし報酬を安くすべきという声を聴くと民主主義の危機だと感じます。
給料や数で公務員たたきをしたら、公務員が減って賃金も減り、連動して民間給与も減っています。
結果、営利企業が公共分野に入り込み、莫大な利益をあげています。
同じように議員や首長など特別職をたたけば、
有権者の声を代表する首長や議員など意思決定の場に大きく関与する特別職の役割も存在も小さくなるでしょう。
大田区は公民連携、包括連携協定で企業等の声をきいて区政を進めるようかわってきていますから、選挙で選ばれていない企業の株主の意向で区政がより動くようになると思います。
巡り巡って、私たちの行政サービス、私たちの民主主義を弱体化させることにほかなりません。
給与や報酬に見合った働きをする公務員、区長、議員など特別職であることを、区民に理解していただける存在になり、不毛な官民格差の是正という賃金引下げ合戦の改定の在り方に問題があることを区民のみなさんと共有し、是正するために賛成といたします。