金持ちも貧乏人も、トランスジェンダーも、
みんな不幸である。
私は、もっと違うストーリーを想像していた。
しかし、現実は、こんなものかもしれないと、
かえって納得した。
「パラサイト」を観た時のように、
人は「それでも生きてゆく」のだ。
イチモツの手術も、血だらけのオムツも、
生々しかった。
観た日の夜は、ずっとこの映画の事を考えていた。
いつも思うのは、
草彅剛は、役にハマッていても、
相手に、愛を渡せていない。
彼は、あまり人を好きになったりしないんじゃないか。
彼の恋愛ドラマは、いつも恋人同士に見えない。
今回も、2時間ワクでは、
母親になっていくプロセスが足りず、
どっちかというと、歩み寄ったのは一果の方だと思った。
草彅本人が、女っぽさを、
あえて抑えたというのは、よく分かる。
しかし、どうもあのカツラが、よくなかった気がする。
コスプレのように見えてしまい、
その上、「案外ガタイがいいな。」と思ってしまった。
せめて、文春のグラビアぐらい、
綺麗に撮れていたら。
むしろ、男として働くと決めて、
短髪になった時の凪沙の顔が優しく、
一番母親に見えた瞬間だった。
つまり、見た目が「女」である事=「母親」
というわけではないのである。
倒れたはずみで、トレンチコートがはだけて、
いきなり乳房が見えてしまうなんて、ありえない。(笑)
「化け物!!」と言わせる為の演出だろうが。
結局、出演シーンが少ない水川あさみ
(金髪過ぎて、最初誰か分からなかった。)の方が、
エキセントリックな「女」そのものであり、
一果の卒業式を勝ち取った「母親」なのである。
田中俊介って人は知らなかったが、
本当にトランスジェンダーの人に、
オファーしたのかと思ったよ。
2人の若い新人は、存在感があったね。
「~なったよ。」「なってないよ。」の、
気だるい掛け合いが、面白かった。
屋上のパーティーで、踊り始めたりんが、
飛ぶだろうという事は、誰もが予測できたろう。
一果の、赤いリュックが気になった。
色は赤でも、ダラッとした感じが、
一果そのものに思えた。
正直、「ミッドナイトスワン」は、
服部樹咲が主演の映画である。
バレエが踊れるのが条件だったようだが、
制作サイドの話でも、上映劇場においても、
涙が出るのは、彼女が踊っているシーンである。
その汚れの無さに、圧倒される。
どんなに周りが、悲惨な状況であっても、
一果だけが、自分の才能に活路を見いだす。
映画とは違うラストだという原作も、読んでみたい。
全編を覆うピアノ曲が、すごく良い!!
一果を後押しするかのように、力強く流れる。
このピアノを聴くだけでも、価値がある。
男が男の姿のまま、男を愛するなら、
パートナーもみつかるだろうが、
女そのものになって、男を愛した場合、
辛いんじゃないのか。
相手が、女の姿を望む人なら、
最初から、普通の女と付き合うだろうし。
ちなみに、違いはあるだろうが、
私は、IKKOさん好きだし、
ナジャ・グランディーバが、
ドラァグクイーンとして踊っているのを見て、
「カッコいい!!」と思ったよ。
この映画は、後半はしょっていて雑だが、
それを、いいとか悪いとか言うより、
人は必死に生きていても、
思い通りにならない事の方が多いと、
「納得」させてくれる作品である。
金持ちも貧乏人も、トランスジェンダーも、
無理をしなければ、決して不幸ではない。
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