ノイバラ山荘

花・猫・短歌・美術な日日

早春図

2010-02-11 16:22:11 | 美術

雨が上がった朝の庭は、かぐわしい匂いがしました。


何の匂いなのでしょう。




打ち伏す水仙の芳香だけではありません。


沈丁花の蕾。


苧環(オダマキ)の芽生え。


桜草の花。
そして土が放つ匂いも混じりあっているのでしょうか。

「早春図」という水墨画が故宮博物館に所蔵されています。
↑クリックすると拡大図が見られます。

11世紀に活躍した宮廷画家、郭煕の画。
1000年も前の人の画なのに、
拡大してつくづくと見るうちに、涙が出てきました。

雲中の山上に楼閣があるのに、人がひとりもいないのです。

崖は険しく、常緑の松の枝は茨のように苦しく、
岩を伝う雪消の水のみが音を立てています。
鳥も獣も生きものの気配がありません。

春と呼ぶにはあまりに寒々とした風景です。

しかし、雪は解けて清らかな水が流れはじめています。
水が流れればやがて川となり窪に魚も棲むでしょう。
鳥や獣が水を飲みにやってくるでしょう。
人は楼閣より出て水を汲むのです。

私にもあなたにも、もう水が流れはじめています。

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