
雨が上がった朝の庭は、かぐわしい匂いがしました。

何の匂いなのでしょう。


打ち伏す水仙の芳香だけではありません。

沈丁花の蕾。

苧環(オダマキ)の芽生え。

桜草の花。
そして土が放つ匂いも混じりあっているのでしょうか。
「早春図」という水墨画が故宮博物館に所蔵されています。
↑クリックすると拡大図が見られます。

11世紀に活躍した宮廷画家、郭煕の画。
1000年も前の人の画なのに、
拡大してつくづくと見るうちに、涙が出てきました。
雲中の山上に楼閣があるのに、人がひとりもいないのです。
崖は険しく、常緑の松の枝は茨のように苦しく、
岩を伝う雪消の水のみが音を立てています。
鳥も獣も生きものの気配がありません。
春と呼ぶにはあまりに寒々とした風景です。
しかし、雪は解けて清らかな水が流れはじめています。
水が流れればやがて川となり窪に魚も棲むでしょう。
鳥や獣が水を飲みにやってくるでしょう。
人は楼閣より出て水を汲むのです。
私にもあなたにも、もう水が流れはじめています。
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