ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「ナバロンの要塞」 アリステア・マクリーン

2007-10-30 14:01:09 | 
小学生の頃、子供たちだけで初めて見に行った映画がこれだ。

転校の多かった私だが、世田谷の三軒茶屋に越してからは、高校卒業までこの街で過ごすこととなった。けっこう賑やかな繁華街のある街で、渋谷まで近いわりに商店街が多く、名称の由来である三軒のお茶屋がどこにあるのか分らないくらいだった。

また大学が幾つかあったため、飲み屋やスナック、ビリヤードなどの店も多く、なにより映画館が4箇所もあった。もっとも、うち一つは日活のロマン・ポルノ専門であったため、興味はあれど近づけなかった。

残り3つのうち、二つは東映と大映の専門で、普段はヤクザ映画専門で時折アニメ映画をやっていたと記憶している。そして、私が最も頻繁に通ったのが、3本1200円の洋画専門の映画館だった。子供は900円だったかな?

小学校の先生が、わりとさばけた人で、映画を子供たちだけで観に行くことを禁じないどころか、勧めている節があった。一人で行くと、入り口の切符切りのおばさんに睨まれたが、6人くらいでまとまっていくと、なぜか簡単に入れてくれた。

行くのは、大概が土曜日の午後だ。学校から一度帰宅して、小遣いを握り締めて映画館の前で待ち合わせたものだ。あれは4年の冬だった。転校後、徐々にクラスの連中とも馴染みだした頃、誘われて映画に行くことになった。

大人抜きで映画を観るのは初めてなので、入る前からドキドキしていたことは良く覚えている。一つ目が表題の映画作「ナバロンの要塞」だ。グレゴリー・ペック主演の戦争ものだった。もっとも私は冒険ものだと思って観ていたと思う。

2つ目が「いちご白書」これは先生のお勧めだった。学園紛争ものを勧める先生って、どうかと思うが、当時はよく理解出来なかったと思う。三つ目は「小さな恋のメロディ」だった。もちろん、女の子たち大興奮。白状すると、私はかなり目を閉じていた。だって、恥ずかしいのだもの。

今にして思うと、凄い組み合わせだ。6時間近く映画館に居たのだが、終わると皆駆け足で家に帰ったものだ。遅くなって、親に叱られるのは真っ平だし、先生に苦情がいくと、映画を観れなくなる恐れがあったからでもある。すぐに帰宅することが、先生との約束だったからだ。

映画を先に観ていたのだが、実は原作があることなんて全く知らなかった。5年以上たってから、中学の図書室でマクリーンの単行本を見つけた時は、本当に驚いた。映画の印象が強かったので、本は面白いのか?と疑問に思いながら読み出した。

ところがビックリ。映画に負けずと面白かった。読み出して数時間で、一気に読破した。いや、映画での興奮を上回るものがあったと感じていた。その後、TVで映画版を再び観たが、やはり本のほうが面白いと思った。映像はたしかに興奮を誘うが、やはり傍観者である感が否めない。しかし、本は違う。自分が参加しているかのような臨場感が味わえる。登場人物と一緒になって、緊張感を味わえる。自らの脳裏に描くイメージの鮮烈さは、映画の映像を超えることがある。

では、映画は不要か?いや、そうでもない。映画監督の紡ぎ出す映像は、別の角度からみたものだし、それはそれで面白い。原作と比較するのは、あまり好まない。別物として楽しむようにしている。私が初めて映画と原作の両方を味わった作品が、このマクリーン初期の傑作であったことは、ある意味とても幸運だったと思います。

だって、駄目な映画化かなりあるからね。
コメント (4)
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