一年前の丁度この時期に「昨年の不況はほんとうにひどかった」と書いた覚えがある。
ちなみにその時の昨年とは平成23年のことである。私の認識の如何に甘かったことか。平成24年度の確定申告を終えて一週間、昨年すなわち平成24年度は23年をはるかに上回る不況であった。
とにかく消費が低迷している。いつもなら交際費使い放題のオーナー社長の個人の申告は頭痛の種であったのだが、今回に限っては悩む必要はなかった。交際費自体が例年の6割程度であったからだ。
確定申告の大半を占める不動産オーナーの賃貸収入は、前年(平成23年)を上回る申告は希であり、大半が前年割れであった。すなわち空き家、空き室、空きテナント、空き駐車場だらけで、赤字申告も珍しくない。
不動産売買は低調で、売買価格も低い。買うなら良い時期だったのだろうが、銀行が融資を渋ってのキャンセルまである始末。資産を十二分に有する不動産オーナーであり、融資を渋る理由が分からず、オーナーの苦情を受けてこちらで問い合わせたところ、担当者が融資のノウハウを持ち合わせておらず、書類を机に仕舞い込んだままであることが発覚。
慌てて支店長と融資担当課長が挨拶に来たので忙しい最中であったが同席する。どうやら今どきの銀行員は、生命保険や投資信託の販売なら慣れているが、不動産融資は苦手なご様子なのかと皮肉を言ったら、既に担当者は転勤とのお返事。あくまで個人の失態であるとしたいらしい。
そんな銀行の言い訳なんぞ聞く価値ないが、有利な融資条件を少し強引に迫ってみたら、散々渋りつつも了承したのだから良しとする。私としては、オーナーからの信頼を勝ち得たことが何よりであった。
ちなみに融資の件は先日、通ったとオーナーから連絡があった。これで次の事業承継がやり易くなったと思うが、反面こんな間抜けな銀行が大手面しているのでは、景気の低迷も当然な気がする。
少し気分よく事務所に帰るが、夜一人静かに自分の事務所の昨年の売上を集計してみたら唖然。予想よりも落ちていた、しかも未回収の売上も増えている始末。これでは資金繰りが苦しいのも当然だと、改めて痛感する。
景気の低迷を政府のせいにするばかりでは能がないが、率直に言って個人の努力では限界がある。白川・日銀が固守してきたデフレ政策は、金融不安を安定させたが、景気を低迷させた主要因でもある。
どうした訳か、白川が退任すると分かってから、何故かここ数年日銀は金融緩和をやってきたなどと与太記事を書くマスコミを散見するが、馬鹿も休み休み言ってほしい。
日銀がやってきたのは金融不安の解消、すなわち資金の流動性を弱めることで、分かりやすく云えばお金が世に回らなくすることだ。安定とは停滞の性格を有するので、金融不安の解消には役立つ。これは日銀の功績だとの論なら分かる。
しかし、それは設備投資や消費動向を抑制することでもあり、必然景気は低迷する。つまり政府主導の不況政策でもある。ちなみに民主党政権はお小遣いをばら撒くことはしても、お金の蛇口を開くことはしなかった。
これは財政赤字を危惧する一方で、官庁の予算規模は確保したかった財務省の意向を汲んだものでもあり、政官一体となった不況政策(金融安定でもある)である。
一応書いておくと、財務省とて一枚岩ではなく、内部では相当な議論があったと聞くが、結果的には金融の安定を優先した。その結果、金融不安を抱えるユーロとドルに対して相対的に信用が高まった円が高値を付けた。
だが、この笑えない喜劇もここまでのようだ。安倍・自公政権の樹立以降、明らかに潮目が変わってきた。既に円安に振れ出し、株式相場は上昇基調。不動産売買も、明らかに以前よりも活気を呈している。
でも、未だ好景気を証明するような決算書の数字は目にしていない。だから私は半信半疑でもある。しかし、今年こそ景気回復の年だと信じたい。寂しくなった銀行の通帳を見ながら、本気で念じている。
税理士という仕事は、赤字の時にはあまり遣り甲斐がない。せいぜい相続対策で株式贈与プランをひねり出すぐらいだ。黒字で税金対策を真剣に考えねばならぬと気こそ、税理士としての遣り甲斐を感じるものだ。
今年こそ、景気回復が本格化して欲しいものです。お狸様、是非ともお願いしますよ。景気よくポンポコってね。