最初に結論から言っておくと、TPPは決して完全には成功しない。
第二次大戦後、西側先進国の貿易ルールとしてそれなりの成果をみせていたGATTだが、冷戦の終結と先進国の相対的地位喪失に伴い、機能不全となりつつあった。
そこで新たに出された貿易ルールの枠組みがWTOである。しかし、これでもまだ不十分であったと判断されたことから新たに生まれた概念がTPPである。
現在、安倍政権がTPPへの参加表明を行ったせいか、反対論議が喧しい。これは分からなくもない。率直に言って公正な貿易ルールとは言い難く、自由貿易=正義との思い込みにより作られたルールである。
自由、すなわち強者の欲望の実現の拡大のための自由であることは歴史が証明してきたとおりだ。
「おい、お前のお皿の料理は美味しそうだな。俺にも食わせろ。その代わり俺の皿の料理を食べ良いぞ」
一見公平に思えるが、言い出した奴の皿の料理は、食べ残しか、さもなければ美味しくないから残っているだけが実情だ。これが自由貿易の本性である。人の欲望に果てがないことを良く示していると言える。
そして当たり前のことだが、ルールと云う奴は一番強い奴が決める。多数決に幻想を抱く人は多いが、なに、先にルールの枠組みを個々に決めておいて裁決に持ち込めば、誰もが決めたことに従う。
それなのに日本の識者の言うところによると、後から参加すると不利益を被るなんて、事の本質を分かっていない。最初っから平等な取り決めではないのだから、不公平なのは当然だ。
言うまでもないが、TPPはグローバリズムの延長線上にある。経済を先進国のルールに基づいてやれば、必ず成長するに決まっているという思い込みであり、従来のODA等の援助では成長しない途上国に苛立った結果でもある。
もっといえば、既に成長の限界に達しつつある西側先進国の一部の貪欲な金持ちたちが、より一層の利益を求めて自国から他の国々へと鼻面を突っ込んできたことでもある。
うちうちで、仲良く利益を分け合ってきた側からすれば、実に面唐ナ厄介な介入である。率直にいって反発するのが自然な感情であろう。
だが相手が悪い。日本にとってアメリカは単なる主要貿易相手国ではない。自国の防衛を一任している軍事的宗主国であり、覇権国家アメリカなくして日本の国防は成立しない。人類の文明の歴史を鑑みれば、経済よりも軍事的安定(すなわち平和)を優先するのが常識である。
この常識が通じないというか、薄れているのが平和ボケしている我が日本であるが、幸い安倍内閣はTPP参加を表明してくれた。反対して解決する問題ではないので、当然のことだと思うが、それすら分からない人が少なくないのが実情だ。
過保護の日本の農業や、知的所有権の争いに不慣れな業界がTPPを恐れて反対するのは分かる。ならば、反対するよりも抜け道を探すことだ。
私はほぼ確信しているが、TPPには必ず抜け道が作られる。これはWTOの時もそうだったのだが、TPPを積極的に推進しようと画策している人たちには、自分たちの不利益を隠す抜け道を必ず用意する。また、そのような抜け道を探し出して、利用する輩が必ず発生する。
結果的に、TPPは抜け道により部分的に形骸化することを避け得ない。反対するよりもはるかに実効性が高い。
疑問に思う人は、過去の歴史が教えるところの貿易協定が完璧に機能した実例を探してみることだ。私が知る限り、そんなもん、ありませんから。鎖国をしていたはずの日本や朝鮮でさえ、抜け道は存在していたのは歴史的事実。
ついでだから書いておくと、日本の農業は案外強くて、海外からの格安輸入品に負けない高品質農産物を作り出して生き残ると思います。むしろ危ないのは金融でしょう。特に銀行が危ない。日本の主要銀行で国際競争力のある銀行は皆無だと私は考えています。
おかしなことに、そのことを自覚している銀行がないのが、殊更滑稽なのですがね。逆に自らに国際競争力などないと自覚しているからこそ大反対なのが農協でしょう。所詮、中間搾取者に過ぎず、商社や食品業界が本格的に農業に参入してくれば、国際どころか国内のライバルとの争いですら生き残れない。
もっとも私が幾つか見てきた小規模な農協だと、生産者との密接な協力の下に売れる農産物の開発、営業などに実績を出しているところもある。現在の農業の実態に危機感を抱いているからこそ、未来へ向けての努力を重ねているのでしょう。
ご存知の方も多いと思うけど、日本の一部の農産物は、海外では高級品として高値で取引されている。日々美味しいものを作ろうとしている努力が実を結んでいるのだと思います。たとえTPPに参加しようと、このような農家はきっと生き残るでしょう。
ただし生き残れない農家も出ることは必然なのも事実。農地は一度荒れると、その再生には多大な労力が必要であり、農家を保護したいとの意見も理解は出来る。でも、いかに保護しようと高齢化の問題には対処できない。つまりTPPに参加しようとしまいと農家の過半は半世紀後には生き残れない。
それでは遅すぎる。いまのうちから新規参入を促して、21世紀の日本の食卓を支える農家を育成すべきだと私は考えます。TPPはその契機の一つとすれば、必ずしも悪いことではないはず。
冒頭に書いたとおり、TPPはおそらく推進者の意向とは裏腹に、必ずしも上手くいかないでしょう。でも、ただ反対するだけでは役に立たないし、知恵もない。徒に現状を固守するのではなく、変化する環境に対応しない限り、21世紀を生き残ることは困難だと思います。
第二次大戦後、西側先進国の貿易ルールとしてそれなりの成果をみせていたGATTだが、冷戦の終結と先進国の相対的地位喪失に伴い、機能不全となりつつあった。
そこで新たに出された貿易ルールの枠組みがWTOである。しかし、これでもまだ不十分であったと判断されたことから新たに生まれた概念がTPPである。
現在、安倍政権がTPPへの参加表明を行ったせいか、反対論議が喧しい。これは分からなくもない。率直に言って公正な貿易ルールとは言い難く、自由貿易=正義との思い込みにより作られたルールである。
自由、すなわち強者の欲望の実現の拡大のための自由であることは歴史が証明してきたとおりだ。
「おい、お前のお皿の料理は美味しそうだな。俺にも食わせろ。その代わり俺の皿の料理を食べ良いぞ」
一見公平に思えるが、言い出した奴の皿の料理は、食べ残しか、さもなければ美味しくないから残っているだけが実情だ。これが自由貿易の本性である。人の欲望に果てがないことを良く示していると言える。
そして当たり前のことだが、ルールと云う奴は一番強い奴が決める。多数決に幻想を抱く人は多いが、なに、先にルールの枠組みを個々に決めておいて裁決に持ち込めば、誰もが決めたことに従う。
それなのに日本の識者の言うところによると、後から参加すると不利益を被るなんて、事の本質を分かっていない。最初っから平等な取り決めではないのだから、不公平なのは当然だ。
言うまでもないが、TPPはグローバリズムの延長線上にある。経済を先進国のルールに基づいてやれば、必ず成長するに決まっているという思い込みであり、従来のODA等の援助では成長しない途上国に苛立った結果でもある。
もっといえば、既に成長の限界に達しつつある西側先進国の一部の貪欲な金持ちたちが、より一層の利益を求めて自国から他の国々へと鼻面を突っ込んできたことでもある。
うちうちで、仲良く利益を分け合ってきた側からすれば、実に面唐ナ厄介な介入である。率直にいって反発するのが自然な感情であろう。
だが相手が悪い。日本にとってアメリカは単なる主要貿易相手国ではない。自国の防衛を一任している軍事的宗主国であり、覇権国家アメリカなくして日本の国防は成立しない。人類の文明の歴史を鑑みれば、経済よりも軍事的安定(すなわち平和)を優先するのが常識である。
この常識が通じないというか、薄れているのが平和ボケしている我が日本であるが、幸い安倍内閣はTPP参加を表明してくれた。反対して解決する問題ではないので、当然のことだと思うが、それすら分からない人が少なくないのが実情だ。
過保護の日本の農業や、知的所有権の争いに不慣れな業界がTPPを恐れて反対するのは分かる。ならば、反対するよりも抜け道を探すことだ。
私はほぼ確信しているが、TPPには必ず抜け道が作られる。これはWTOの時もそうだったのだが、TPPを積極的に推進しようと画策している人たちには、自分たちの不利益を隠す抜け道を必ず用意する。また、そのような抜け道を探し出して、利用する輩が必ず発生する。
結果的に、TPPは抜け道により部分的に形骸化することを避け得ない。反対するよりもはるかに実効性が高い。
疑問に思う人は、過去の歴史が教えるところの貿易協定が完璧に機能した実例を探してみることだ。私が知る限り、そんなもん、ありませんから。鎖国をしていたはずの日本や朝鮮でさえ、抜け道は存在していたのは歴史的事実。
ついでだから書いておくと、日本の農業は案外強くて、海外からの格安輸入品に負けない高品質農産物を作り出して生き残ると思います。むしろ危ないのは金融でしょう。特に銀行が危ない。日本の主要銀行で国際競争力のある銀行は皆無だと私は考えています。
おかしなことに、そのことを自覚している銀行がないのが、殊更滑稽なのですがね。逆に自らに国際競争力などないと自覚しているからこそ大反対なのが農協でしょう。所詮、中間搾取者に過ぎず、商社や食品業界が本格的に農業に参入してくれば、国際どころか国内のライバルとの争いですら生き残れない。
もっとも私が幾つか見てきた小規模な農協だと、生産者との密接な協力の下に売れる農産物の開発、営業などに実績を出しているところもある。現在の農業の実態に危機感を抱いているからこそ、未来へ向けての努力を重ねているのでしょう。
ご存知の方も多いと思うけど、日本の一部の農産物は、海外では高級品として高値で取引されている。日々美味しいものを作ろうとしている努力が実を結んでいるのだと思います。たとえTPPに参加しようと、このような農家はきっと生き残るでしょう。
ただし生き残れない農家も出ることは必然なのも事実。農地は一度荒れると、その再生には多大な労力が必要であり、農家を保護したいとの意見も理解は出来る。でも、いかに保護しようと高齢化の問題には対処できない。つまりTPPに参加しようとしまいと農家の過半は半世紀後には生き残れない。
それでは遅すぎる。いまのうちから新規参入を促して、21世紀の日本の食卓を支える農家を育成すべきだと私は考えます。TPPはその契機の一つとすれば、必ずしも悪いことではないはず。
冒頭に書いたとおり、TPPはおそらく推進者の意向とは裏腹に、必ずしも上手くいかないでしょう。でも、ただ反対するだけでは役に立たないし、知恵もない。徒に現状を固守するのではなく、変化する環境に対応しない限り、21世紀を生き残ることは困難だと思います。