ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

中国経済がダメになる理由 石平・三橋貴明

2013-05-27 14:16:00 | 

これからが本番。

なにがって、シナにおける日本企業への暴動である。

今だから言うが、尖閣諸島なんざ東京都に買わせておけば良かった。それを国がしゃしゃり出るから反日感情に火が付いた。そんな風に思っている日本人は多いのではないか。

そうではない。

たしかに北京政府は尖閣諸島を欲しいと思っている。正確には台湾から沖縄、九州までの海域を自由に航行できるようにしたいと考えているからだ。もちろん現状は、アメリカ軍の勢力下である。

だが、尖閣諸島問題とシナにおける反日暴動騒乱はきっかけではあっても、本当に原因ではない。本当の問題は、シナにおいて反政府感情が高まっていることだ。

共産党の一党独裁の体制下で、部分的に経済開放をして未曾有の規模で経済成長を続けてきたシナは世界第二位の規模にまで膨れ上がった。しかし、その内情は外資による生産工場と原材料の輸入による加工貿易である。

この製品輸出こそがシナの経済成長の根幹である。この輸出依存体質がリーマン・ショックに伴う欧米の景気後退の影響を強く受けた。日本とてこの影響はかなり受けたが、GDPにおける輸出の割合が10%程度なので耐えられる。

しかし、シナのGDP(国内総生産)の4割が輸出産業に基づく。だから欧米の景気後退の影響は甚大だ。しかも国内需要は小さい。日本のマスコミが真実を報道しないので勘違いしている人が多いが、シナにおける13億人の消費者市場は幻想に過ぎない。

なぜなら経済成長による富の大半は、1割程度(一億人前後)の特権階級(共産党幹部とその家族)が独占しており、残り9割は率直にいって貧困階級だ。国家を支えるはずの中産階級が少数(2千万から5千万人ぐらいと推測)なので、国内消費市場の規模が小さい。

いくら一億人のミリオネアが居ようが、彼らが国内で消費する金額はそれほど多くない。せいぜいが不動産投資ぐらいで、国内においては必要な消費物資はそれほど多額ではないため、彼らは国内景気の牽引車とはならない。

それどころか、この特権富裕階級は蓄えた富を海外に送金し、国内には置かない。おまけにかつては医療など社会保障が充実していたのに、現在は社会保障制度が崩壊し、貧困者階級は医療保険に未加入なのでわずかに稼いだ富も貯金せざる得ない。

稼ぎ頭の輸出がリセッション(景気後退)している以上、残された道は国内消費市場なのだが、ここがお寒い限り。これがシナの現実だ。幸いにして独裁国家なので、情報の統制がある程度可能だ。

だからあまり報道されないが、おそらく数千万人規模の失業者、浮浪者が巷にあふれている。彼らは郷里の田舎の寒村に戻っているので人目に付きにくいことも、真実を隠すのに都合がよい。

だが、いくら情報を隠せても、人々の心に鬱積した不満までは隠せない。だからこそシナの各地で暴動が相次いでいる。2005年以降は暴動の数値を発表しなくなってしまったので推測でしかないが、それでも増えることはあっても減ることはないだろうと容易に推測できる。

表題の本は、シナ出身で日本に帰化した石平氏と、2ちゃんねる出身の気鋭の経済評論家の三橋氏の共著である。この本が書かれたのは2006年なのだが、書かれていることは概ね当たっているのではないか。

民主主義の国ならば、国家的な不況は選挙による政権交代で、国民の不満を緩和することが出来る。しかし、共産党による独裁体制をとるシナでは国民の不満を緩和するような制度がない。民衆の暴動は武力により弾圧するしかないと二人は述べる。私もこの二人の考えに同意できる。

だからこそ、尖閣諸島問題で起きた反日暴動は黙認された。反政府目的の暴動なら断固として弾圧するが、反日暴動で日系企業が被害を受けるだけなら黙認して、民衆の鬱屈を晴らさせた方が好ましい。

尖閣諸島問題は口実であって、本当の目的は不況と失業に苦しみ、政府の横暴に憤り、未来に希望をもてずにいる大衆の不満を緩和することだ。輸出頼みの中国経済は、欧米に大量に製品を売りさばく以外に不況からの脱出は出来ない。

未だユーロ危機の火種を抱える欧州は期待薄いし、財政の壁にぶつかるアメリカも本格的な回復には遠い。本当は国内のいびつな経済格差を是正して、健全な中産階級の育成こそが正攻法だ。

しかしシナの既得権を握る特権階級は、中国共産党の幹部とその親族から構成される。不正と汚職と贈賄にどっぷり浸かったこの特権階級が、自らの蓄財の元である特権を手放すはずもない。それゆえにシナの大衆の大半は怒りと不満と失望を抱え込まざるを得ない。

断言しますが、北京政府が自国の構造改革に成功しない限り、輸出頼みの経済構造ではこれ以上シナの大衆は豊かになれない。健全な中産階級あってこそ、国内市場は豊かになる。だが、それは特権階級の既得権を削ることを意味している。それが出来ない北京政府としては、その困窮に喘ぐ大衆の怒りが自分たちに向けられるのが一番浮「。

シナの歴史を学んだ者ならば、古来より幾多の王朝が不満と怒りを抱いた民衆の暴動を契機に唐黷トいることを知っている。北京政府としては、反日暴動は大衆の不満と怒りを発散する絶好の機会であり、日系企業の撤退のリスクはあってもそれで済むなら良しと考えている。

それゆえに第二、第三の反日暴動は必ず起きる。

私は予言めいたことを云うのは嫌いですが、この予言は必ず当たると確信しています。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする