素手の喧嘩なら負けたことがない。ヤクザだって道を譲る俺だぜ、そう粋がっていたら拳銃で頭を打ち抜かれて一巻のお終い。
あれ?おりゃ死んだんじゃないのか。誰だ、この泣きついてきた女は?って、勇作って誰のことだ。
そういえば、この女の面影に見覚えがある。たしか十代の頃一時一緒に暮らした女じゃないか。たしか子供を産んだと風の噂に聞いてはいたが、たしかそのガキの名前が勇作だった・・・
なにがなんだか分からないが、死んだはずの俺は何故か昔捨てた女の子供の身体に転生していた。なんでも勇作は自殺を図ったらしい。なんだって俺の子供が自殺なんてしようとするんだ?
チンピラに撃ち殺されたはずなのに、なぜか会ったこともない息子の身体に乗り移ってしまった。しかも、いじめを苦にしての自殺未遂。よく分からないが、とにかく二度目の人生も、俺は好きにいきてやるぜ。とりあえず、息子を・・・いや、この身体の持ち主だった息子をいじめてくれた奴らに、お礼をしなくちゃな。
かくして、二度目の人生を生きることになった主人公は、その長年狽培った喧嘩のノウハウを活かして、たちまちのうちに学校を締めてしまった。その喧嘩のシーンが実に爽快というか、面白い。
スピーディーな展開に加え、主人公の口の悪さ、性格の悪さがアクセントとなって、この漫画は人気を博した。しかし、これだけなら単なる不良少年の喧嘩アクション漫画の域を出なかったはずだ。
人を信じず、己の力だけで生きようとした主人公は、中盤に至り自らの喧嘩に巻き込んでしまった恋人を失う。その喪失感を更なる喧嘩で埋め合わせようとするが、一向に心の渇きは癒せない。
そして終盤に至ってようやく知った転生の意味。心からの謝罪を叫び、償いが何であるかを求めた主人公は、自分が喧嘩に逃げていたことを知り、本当に謝らなければならないことが何であるかを知る。
この最後があるからこそ、この漫画は私の心に印象を深く残した。単行本にして30巻を超える長編ではあるが、出来るなら軽い気持ちでページをめくり、その爽快なエンディングを知って欲しいと思います。