あの平面ガエルのピョン吉から産まれた娘カエルが、運命の悪戯か、ワンピースに張り付いた。
そんなイメージを持って読みだすと、頭をぶん殴られたぐらいの衝撃を受けるのが表題の作品だ。作者は「ど根性ガエル」の作者である吉沢やすみの実の娘である。
「ど根性カエル」は大ヒットとなり、作者である吉沢は23歳にして一戸建てを現金で購入し、妻と一男一女の家族をもった。しかし、あまりのヒットによるストレスから、漫画を描けなくなった吉沢は酒と賭博に逃げた。
本当は優しいお父さん、でも賭博で荒み、酒で暴れる吉沢やすみは、漫画を描くことが出来ず、稼いだ大金も数年で酒と賭博につぎ込んでしまい、一家は貧困に悩むこととなる。
そのストレスから吉沢は失踪し、家計は看護師の資格を持つ母の細腕に頼ることとなる。そんな家庭を描き出したのが、表題の作品なのです。幸か不幸か、一時は父を嫌った娘は、漫画家となった。
幸いにして、ど根性ガエルのピョン吉は、パチンコ台に使われ、栄養ドリンクのCMにも登場し、その著作権料により吉沢家は救われた。失踪を繰り返した吉沢やすみも、精神的にも金銭的にも安定し、現在は細々と絵の仕事をしながら、好きな麻雀を楽しむ。
そこに至るまでの過程を、娘は淡々と優しい絵柄で描き出す。漫画家を父にもった娘が描き出す、父の姿は時として壮絶であるが、優しい姿も忘れずに描き出す。内容はかなりハードなのですが、娘の優しい視線が、それを柔らかく描き出す。
読んでいて辛いくなるほどの場面がいくつもある。だが、目頭が思わず熱くなるような場面もある。きっと、描けないような辛い場面もあったのだろうと、容易に分かるのが、更に辛い。それでも、読んだ後で、ぼんやりとした温かい気持ちになれる。
興味がありましたら、是非ご一読を。