平成のスーパーヒーローが引退した。
既に三年前ぐらいから、試合に出る回数が激減していた。昨年からはコーチ兼任とされたが、事実上現役選手ではなくなっていた。その最後の花道を、私は今年夏だろうと読んでいた。
しかし、まさか日本での開幕戦で引退するとは思わなかった。平成の終わる年に、平成である間に引退してしまった訳だ。
彼の打ち立てた記録のうち、打率と安打数はいずれ塗り替えられる日が来ると思う。でも、20年以上に渡って積み重ねてきた高打率と安打数の積み重ねは、決して破られることはないと思う。
毎試合、出場し、打ち続け、守り続けた20代、30代。故障が少なく、常にベストのプレーを続けてきたプロの鑑と言ってよい選手でもあった。これは本当にすごいことだ。
イチローに負けず劣らずの才能を持った選手は他にもいた。でも、20年以上にわたり第一線で実績を残し続けた選手は極めて少ない。その意味でも、本当に偉大な選手であったと思う。
ただ、その一方でチームプレイヤーとしてのイチローに対しては、些か辛口の評とならざるを得ない。これだけ才能ある選手であるにも関わらず、イチローがチームの中心選手であったことは、ほとんどない。
本人が自分には人望がないと自虐するほどに、イチローはチームの中では浮いた存在であった。個人的に親交のある選手はいても、彼はチームリーダーではなかった。そのせいか、イチローはその素晴らしい個人成績に比して、チームプレイヤーとしての実績に乏しい。私の記憶では、日本でもアメリカでも、チームとしてのリーグ優勝は皆無であった。
唯一の優勝は、あのWBCの日本代表チームのメンバーであった時だけだ。あの時のイチローの優勝時のはしゃぎっぷりは凄かった。本当に嬉しかったのだと思う。ちなみに、あの時の個人成績は不振を極めていた。それだけに、あの優勝を決めた試合でのヒットは素晴らしかった。
私個人としては、あの韓国との決勝戦での9回裏のヒットこそ、彼の頂点とも云えるプレーだったと思っている。
頑固一徹の職人気質の野球選手でしたね。まだ四十代、これからの人生をどうするのか、興味が尽きない人でもありますね。