ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

さよならシリアルキラー バリー・ライガ

2019-03-29 11:48:00 | 

子供にとって、親は選べない。

その親が被害者が100人を超す連続殺人犯で、しかも幼少期から殺人のノウハウを子供に教え込んでいた。

そんな家庭で育ち、なんとか平穏に暮らしていたが、それも父親の逮捕により人生が一変したのが表題の作品の主人公だ。

祖母の下で暮らす主人公は、周囲の冷たい目線に負けることなく生きている。でも、内心で自分が殺人鬼としてのエリート教育を受けたことを気に病んでいる。

自分は絶対に、父親の望んだ様な殺人鬼にはならない。そう堅く胸に誓うがゆえに、街で起きた殺人事件に無関心ではいられない。そして、気が付いてしまった。この殺人事件が連続殺人事件であることに。その犯人が父親と同様なシリアルキラーであることに。

かくして、自らの存在の健全さを賭けて主人公は、この連続殺人犯を追い求める。

サイコ・ミステリーの匂いが濃厚な作品である。私は経験的に、サイコ・ミステリーが読者の心を傷つけることを知っている。その毒は甘く魅惑的で、思わず嗅がずにはいられないが、嗅いでしまったら心を侵食して傷つける。

だから、サイコ・ミステリーはたまにしか読まないことにしている。

しかし、この作品に関しては、その心配は無用である。登場する連続殺人犯は確かに異常だし、その犯罪も陰惨なものだ。しかし、主人公の危うい健全さが、むしろ青春ミステリーとでも言いたくなる明るい空気をまとっている。

まだ十代半ばの主人公は、殺人鬼の父に育てられたが故に、心に深い傷を負っている。でも、そんな逆境に負けない前向きさを持っている。父親の逮捕後も変わらずに接してくれた親友と、暖かく見守ってくれるGFの存在が、彼を健全な社会につなぎとめてくれる。

この高校生素人探偵を主人公にした作品は、あの2作ある三部作であるそうだ。私としては久々に快活に楽しめるサイコ・ミステリーでもある。サイコ嫌いな方も是非とも手に取って欲しい作品なのです。

コメント
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