この作品は人気の漫画「鬼滅の刃」からスピンアウトしたものだが、漫画ではなく小説となっている。ただし、子供も読むことを前提にしているので、優しい文体となっている。
内容は鬼滅ファンでないと理解できないし、面白くもない。ただファンにとっては、本編では明らかにされなかったことが分るので、目を通さずにはいられない。なので、内容については語らない。
私が驚くのは、「鬼滅の刃」の人気の出方の特殊さである。週刊少年ジャンプは読者からの人気投票で連載の是非を決める。私は2016年の初連載以来、読んでいたが、その人気は中位をふらついている程度のものであった。
もっと人気が出てもおかしくないと私は思っていた。当時、単行本の発売部数は一巻につき平均100万部程度であった。人気作と評して良いが、「ONE PIECE」や「NARUTO」などと比べればはるかに控えめな数字である。
転機はアニメ化であった。2019年にアニメが放送されると、急激に人気が上昇した。特に第一期の放送終了前後に18巻が発売されたことも大きい。私としては、一番面白いと思っているのが、この巻なので期待通り300万部突破の売れ行きであった。
ちなみにアニメ化はわりと遅いほうだ。発表から1年近くたってからの放送開始であったが、それだけ準備に時間をかけた良作だと思う。主題歌の「紅蓮華」の大ヒットも相まって知名度は飛躍的に高まった。
ここまでならば、普通のヒット作である。しかし、鬼滅には幸運というか、僥倖といってよい追い風が吹いた。それが新型コロナウィルスによる自粛と自宅待機であった。
アニメ化され主題歌がヒットしたといっても、アニメの放送は夜遅いし、普通の社会人はまず視ない。しかし、この自粛期間中にこのアニメはネット配信された。これを視聴した大人たちにも人気が拡がった。
アニメはまだ第一期であり、単行本でいえば1巻から6巻までに過ぎない。続きが知りたければ、単行本を買うしかない。その結果、全国の書店から「鬼滅の刃」の単行本が売れまくり、セット買いの禁止が言われるほどである。
おそらくこの時期に購入したのは、大人買いが出来る経済力のある中高年であろう。ポストカードのおまけが付いた20巻などは、書店が呆れるほどに売れまくった。
その結果、2020年の上半期のコミックランキングの1位から19位までを「鬼滅の刃」が独占するといった前代未聞の事態となった。4年前に発売された1巻までも売れたのだから、必然の結果でもある。
自粛期間とステイホームという神風が吹いたのは確かであろう。ただし、元々、大人から子供まで、小学生男子から大人の女性までを惹きつける内容であったことも確かだ。だからこその大ヒットであったと思う。
長年漫画を読み続けてきた私としても、異例としか言いようがない。ちなみにアニメは第二期がおそらく年末あたりに始まると思う。まだまだ、この人気、続きそうである。