もしかしたら少年誌での連載ではないほうが良かったかもしれない。
そう思ったのが表題の作品だ。日本どころか世界中で人気を博した「鬼滅の刃」の後を牽引することを期待された週刊少年ジャンプ誌の看板漫画なのだが、思ったよりも人気が延びずにいる。
年末年始、じっくりと原作を読んでみたのだが、面白いかと問われればまァ面白いと思う。ただ明るさが足りない。主人公の設定は良いと思う。なにか出生に秘密がありそうだが、それはおいおい楽しませてもらう。
ただ、この作品の要は「呪い」であることが致命的だ。しかも呪いを祓うことにあまり重点が置かれていないため、ストーリー全体に重ぐるしさが漂うのは避けられないと思う。
呪いをテーマに置いてしまうと、そこからハッピーエンドを導き出すのは難しい。呪いとは反ハッピーエンドを目指すものであり、そのベクトルを反転させるのは難しいというか、主題を損ねてしまう。
これが憎しみとか怒りならば、愛と寛容に導くことは王道となるが、呪いの先行きは暗く重い。せめて子供向けではない雑誌連載であるならば、今少し明るいエンディングを期待できたと思う。
実際問題、この作品アニメ化されてそこそこ人気はあると思うが、子供たちの間での人気は「鬼滅」に遠く及ばない。
少し脱線するが、この作品のもう一人の主人公かもしれない両面宿儺を呪いの王だと設定したことも拙かった気がする。資料の少ない古代日本史に登場する名だが、おそらくは大和朝廷に逆らう地方の豪族もしくは異民族であった可能性が高い。
古代日本史には土蜘蛛とか怪しい名称の存在がしばしば記述されているが、これは日本列島各地に暮らしていた非・大和朝廷系の民に対する呼称であり、シナが日本を倭と呼んだのと同様の蔑称に過ぎない。
北から南まで細く長く、しかも山脈に分断される日本列島には現在でさえ方言や独特の文化が散見される。大和朝廷による征服が終わってもなお、地方には独特の文化構造が残っており、今も不完全ながらその独自性が見受けられる。
私は妖怪や魔物の類いとしての両面宿儺はまったく知らない。異星人としての宿儺ならば読んで記憶がある程度だ。呪いの王ではなく、大和朝廷から排斥された少数部族としての両面宿儺ならば、もう少しハッピーエンドを期待できたと思ってしまう。
ただ見方を変えれば、今後のストーリー展開によっては従来のダークファンタジーにはない新しいエンディングも期待できる。作者と編集部の健闘を願いたいものである。