ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

わくわくワーキング13巻 お~はしるい

2022-01-25 11:34:00 | 

人生に転機があったとすれば、私の場合それは大学生の時であろうと思う。

もちろん、落ちこぼれ中学生から猛勉強中学生へと変わった時や、難病により真っ当な会社員人生から転げ落ちた時も転機ではある。

ちなみに税理士試験合格は予定されたものであって、その後の生計を支える重要なものではあるが、私の中では転機だとは思っていない。あれは決められた事を暗記し、計算を反復することを十分やれば達成できると思っている。

ところが、大学で出会ったワンゲル部の連中には本気で驚かされた。上場企業の社長息子や幹部の子弟だけでなく、地方の名家の子弟がゴロゴロしていた。私が高校までまるで出会ったことのない人種であった。いや、正確には、居るには居たが、面白みがないので積極的に関わらなかった。

私の十代は、良くも悪くは「チョイ悪」な友人たちばかりと付き合っていた。法律とは破るものであり、ちょっと隙間をみつければ法の穴をくぐることに躊躇いのない連中である。もちろん私のその一人である。

ところが、大学のWV部の連中ときたら、バカかと言いたくなるほど真面目であった。よくもこんなお真面目ぶりで生きてこられたもんだと呆れたほどである。鴨が葱背負って、おまけにタレと薬味を携えて歩いているのかと本気で心配したほどである。

4月の入部から数か月、過酷な部活のせいで浪人時代につけた脂肪は、あっという間に消えて身体は絞り込まれた。走るのが大嫌いな私が、嫌々ながらも長距離を走る羽目に陥り、放課後のトレーニングの時間が来るのが憂鬱で仕方なかった。

WV部のトレーニングは1年から4年まで皆同じメニューをこなす。ある意味平等であるが、それだけに逃げ出したり、サボったりするのが難しい。お坊ちゃん育ちの同期たちも苦しんではいたが、それでも前向きに取り組んでいる。おかげで私までサボれなくなった。

これには困った。これまで運動は自分が苦しくない範囲内で楽しくがモットーだったので、吐くほどに苦しいトレーニングにはゲンナリした。更に困ったことに、同期の誰もが真面目なので、サボりも手抜きもしようとしない。

なんという息苦しい生き方だと思ったが、反面その大通りのど真ん中を堂々と生きている有様が眩しかった。日の当たる場所を、何事も恥じることなく顔を上げて生きている様が羨ましかった。

思えば私の人生は陰日向を交互に歩み、裏通りをコソコソと生きることも珍しくなかった。いや、コソコソどころか、薄ら暗い悦楽さえ自覚していたワルガキだった。自分なりに真面目に生きると決めてからも、一緒に遊ぶ仲間はチョイ悪の連中ばかりであった。まァ、彼らも全員堅気の人間ではあるが、それでも大学のクラブの同期と比べれば、けっこうな悪ガキだった。

気が付いたら、私は悪いことをほとんどしない真面目な大学生になっていた。実際、道交法違反ぐらいしかやってない。ちなみに中学から高校までは法令に違反というか、明らかに犯罪だろうってことを結構やっていた。でも狡賢かったので警察の世話にはなっていない。

厳密に言えば、大学のクラブの同期も、未成年で飲酒、喫煙などはしていたが、せいぜいその程度だ。私からすれば悪さの内に入らない。クソ真面目に生きている自分に気恥ずかしさは感じていたが、反面堂々と生きられる安堵感も感じていた。これはこれで悪くないと思った。

ちなみに半世紀を超える我が部だが、入部から卒業まで一人も欠けることなく過ごしたのは私の同期だけだ。ヘンな言い方だが、妙に気が合うというか、脳みそ筋肉系の真面目バカが揃ったせいで、部活も遊びも7人いつも一緒だった。

こいつらのおかげで、私は真っ当な堅気の道を生きられることになったと思っている。そこから零れ落ちるのが嫌で、悪い誘惑から逃れることも出来た。残りの人生がどれだけあるかは分からないが、奴らとは最後まで仲間でいたいと切望している。

それにしても、私がこれほどまでに真面目に生きられるとは思わなかった。浮き沈みの激しい人生だとは思うが、一つぐらい誇れるものがあるのもいいもんだ。

ところで表題の四コマ漫画は、実に18年も連載が続いた。仕事一筋の猪突猛進OLと、その仲間たちの6年余りを描いている。どのような結末になるか、おおよその予想は付いたが、まァ納得の完結である。

作者のおーはしるいの漫画は、いつも健全な気風に満ち溢れている。だからきっとハッピーエンドだと確信していたが、その予想に違わぬ幸せな結末には納得である。

多分、堅気になれなかった私なら、この漫画を楽しむことはなかったと思う。


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2 コメント

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Unknown (ヌマンタ)
2022-01-26 11:27:52
大俗物さん、こんにちは。ワンゲルに限りませんが体育会系のクラブって、けっこう軍隊に似た感じはありそうです。特に武道系なんてそうでしょうね。戦後の日本は軍隊を否定することが良識みたいなところがありますが、規律を獅ニする軍隊式訓練は決して悪い事ではないと思います。

ただ軍隊は、人間の悪い面も引き出してしまうので、精神主義が横行するとイジメや体罰が幅を利かすことがあります。これは体育会系のクラブでも同様だと思います。もちろん良い面もあるからこそ、どの時代、どの国でも軍隊は国家の基本となるのですけどね。
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Unknown (大俗物)
2022-01-25 15:01:52
ヌマンタさんこんにちは。
ワンゲル部一回生の訓練の様相と、サボれない状況が、キャラたちは真逆なのに、私の自衛官の初頭訓練時代に似てるので、失礼ながら笑いました。私の場合は、基本的にヤクザ事務所に修行させてもらうか、ニートになるか、自衛官になるか?しかない連中ばっかりで、でも漁師の家系が多いので体力だけはある。が、下士官たちも似たような人達でしかも鍛えられてる。それでブチのめされたりして(一番に体がデカくて態度のデカい奴が真っ先にヤラれる)、いやいや首に縄をつけられるようになる。
そうこうするうちに、「サボりたいけれど一生懸命やっている自分に気がつく」という羽目になるんですねぇ(笑)
ヌマンタさんを除くと、ほばワンゲル部の人の全てが真逆なのですが(私の場合の数は基本的に全員がヌマンタさんと思われたい🤣)、
結果が同じになるという不思議な現象。
まぁ体育会って(自衛隊も体育会みたいなものでしょう?)そういう文化なのかもしれまさんね。
自律AIドローンとロボット兵器の時代にはどうなるか知りませんけれど。
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