Photo by Ume氏
深まる秋、久しぶりに深夜起きている。午前3時少し前、いろいろと思うこと多く、例によって強い酒を飲みながらアルコールでそれらをこねくり回している。どんなカクテル味になるのか。
きょうの写真は「貴婦人の丘」を北の方向にドローンのカメラを向けて撮った1枚。人ばかりか牛にもお気に入りの丘で、今は屋外スタジオのような場所になっていて、牛の放牧はしていない。
昔は「ナシの木」と呼んで、北原のお師匠が子供だった80年以上も前には、ここにあったヤマナシの実を食べに芝平の子供たちと連れだって来て、放牧中の馬を追い駆けたりして遊んだ思い出の地だと以前から聞いている。
90歳を超えるお師匠以上に長い歴史のある牧場であるが、これから先、この丘ばかりか牧場全体はどう変わっていくのだろう。200頭近くの牛が上がってきたころでも、事業規模はそれほど大きくはなく、それも今では牛の入牧頭数は減るばかりで牧場の存在意義は薄れ、このまま牧場を維持していくのはますます困難になるのではないかと案じている。
そうなったらしかし、ここの自然やこの美しい景観はどうなってしまうのだろう。一介の牧守がそんなことを心配してみても詮無いこととは充分に分かっているが、その不安は間欠泉のようにときどき噴き出してきて、眠れぬ夜を悩ます。
記憶力のせいかどうか、これまでに何度か仕事を変えてきて、職を去る時の一抹の寂しさはあっただろうが殆ど覚えていない。どの仕事も今は淡々と思い返すだけである。しかしその中で、3年で終わった小さな店「CAMP ONE」と、この牧守の仕事については違う気持ちを持っている。
遠い昔、苦境にあった時、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉もあるからと、当人こそが苦境のど真ん中にいた人物から、慰められたことがあった。その言葉を嚙みしめつつ、一体いくら流されたらその瀬に流れつけるのかと思いながら流され続けた。
何年が過ぎたのだろう、ようやく流れ着いたのがささやかな瀬、つまりこの牧場であった。そして以来、広大な自然と牛を相手に、野生シカを敵に回し、文字通りのお山の大将となって15年が過ぎた。先のことは分からぬも、その年月に満足している。
こんな自然の施し物・ハナビラタケを見付けたが、そのままにしてきた。本日はこの辺で。