入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’17年「冬ごもり」 (8)

2017年01月10日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


「タヌキ鍋」という料理についてこれまでも耳にしたことはあるが、実際はどんな物かは知らない。何となく美味そうに聞こえるが、食べたという人にも会ったことはない。
 大体、本物のタヌキの姿と、漫画や絵、焼き物になっているタヌキもどきとは随分と異なる。時折、罠に掛かることがあるが、タヌキ汁にする気には到底なれない、放してやる。しかし、小さな体躯にもかかわらず野生の生き物である。小癪ながら凶暴さ丸出し、ありとあらゆる威嚇、反撃を試みようとしてくる。こちらは早く楽にしてやろうとするのだが、そんなことを知る由もない相手は、暴れて闘いが長引くこともある。
 普段そういうタヌキを静かにさせるには、罠の部品である30センチばかりのプラスチック製のパイプで頭を狙ってコツンとやる。以前、その加減が分からず少し強過ぎて、撲殺してしまったかと慌てたこともあった。幸いタヌキは息を吹き返し(狸寝入りではなかった)、しばらくキョトンとして、やがて痛む手が自由だと知ると尻をフリフリ一目散で逃げていった。
 ところで、タヌキよりもタヌキに似ているのがアナグマである。こっちは腹もタヌキ腹でよく太っているし、体長もタヌキよりある。顔も鼻から目の辺りに黒い隈があり、本物のタヌキよりも顔といい、動きといい、余程タヌキらしくて愛嬌があり、可愛い。実は猟師の間では、このアナグマの肉が一番美味いということになっているらしい。
 アナグマは、人間の姿を見ればコロコロと穴や土管や藪の中に逃げ込むが、罠に掛かってしまったときはタヌキ以上に凶暴さを見せ、死にもの狂いで暴れ、なかなかコツンができない。特にあの強力な長い爪には要注意で、やられたら、とても只では済まない。
 それで思うに、どこかでこのタヌキとアナグマのことが混同され、アナグマ料理がタヌキ鍋だか汁と、取り違えられてしまったのではないだろうか、と疑うようになったのだが・・・、ハテ。ともかく、クマよりも、イノシシよりも、はたまた鹿よりも格段に美味いと聞いた。
 アナグマを食べたことのある猟師は知っているからタヌキもついでに食べて貰い、是非とも味比べの感想を聞いてみたいものだ。と言って、いずれがどうであれ、頂戴することはとても無理、ご遠慮するが。

 
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    ’17年「冬ごもり」 (7)

2017年01月09日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 牧場に入る手前のいつもの場所に車を停めた。 高曇りの空だったが、ちょうど槍と穂高の上空にかすかながら薄青色の帯状の空があって、その”救い”のようなほのかな空色は常念岳の辺りで消えていた。乗鞍も御嶽山も、さらに中央アルプスの峰々も、灰色の冬空を区切り、浮かぶように見えていたが、気の晴れるような眺めとは言い難かった。音は消え、色彩の乏しい、うら寂しい風景は、重苦しい曇天がきっと広過ぎたせいだったのだろう。
 北門の手前でいつもの習慣が出た。それは、左手の大沢山西斜面に目をやることだったが、やはり枯れ尽きた草地に、20頭ばかりの鹿の群れがこちらを注視していた。今冬は雪の降るのが遅いため、鹿も山を下りかねていたのだろう。ここ1,2年、辺りの鹿の頭数は急減したと聞いていていたが、温暖化を助けに、繁殖がまた盛んになることも考えられ気が滅入った。これだけ鹿を相手に闘っていると、いつしか敵である鹿に対しても、愛憎こもごもの矛盾した気持が自然と湧いてくるものなのだ。
 ずっと低温の日が続いたようで、暖かさのない殺伐とした周囲の雰囲気に気圧(けお)されつつ初の沢の「大曲」付近まで来ると、湧水や流れの飛沫がいたる所で氷結していた。この奥から引いてきている水に毎年苦労してきたが、昨年は特に色々と試みた。しかし、その甲斐もなく、これでは管内の水の凍結はまぬがれないだろうという気がした。
 管理棟内へ入る前に気温を確認して、問題の取水場へ行ってみた。気温はかろうじて零度を上回っていたが、貯水タンクの底に乾き切った地表を覚悟して蓋を上げた。すると、水量は落ちたかも知れなかったが、凍結もせずに澄んだ水が流れ込んでいた。嬉しかった。それを確認できただけで、牧場へ来た目的の大半は終わっていた。来もしない客を待ちながら長い夜を酒に紛らわす気など、その段階で呆気ないほど失せていった。
 結局、各牧区を見回ってから、本格的な雪が降り出す前に牧場を後にした。
 今ごろ、きょうの写真の風景も雪に化粧され、老いさらばえたような景色が、冬の牧らしい白銀の美しさを一時だけでも取り戻していることだろう。

 Toshyさんの気持を思う、自分の経験とも重ねて。

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    ’17年「冬ごもり」 (6)

2017年01月08日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    奥社の参道脇を流れる川

 昨日は長野市へ行ったついでに、戸隠神社まで足を延ばした。神社の予備知識もないまま出掛けたため、戸隠神社と言っても5社よりなっていることなど知らず、宝光社は素通りし、中社(ちゅうしゃ)、奥社を参拝するだけで精一杯、時間切れとなってしまった。積雪もかなりあり、特に奥社の参道は上に行くほど急になり滑り、恐らくツボ足では、入笠山に登るよりも困難だと思ったほどだ。時間も遅くなり、帰ってくる参拝客はいたが、後続者は1名だけだった。それにしても若い参拝者が多く、果たして彼ら彼女らが全員奥社まで、杉の古木が並ぶあの滑る雪道を登りおおせたのだろうかと疑った。登るのも大変だが、下るのはより技術が要っただろう。
 夕暮れが迫る神殿から、雪を被った戸隠の岩山を霧が絡む幻想的な雰囲気を目にしたし、神社の森一帯に漂う淑気と言ったものも存分に吸い込むことができた。そう感じて、満足して帰ってきた。


    中社の鳥居(名神式=出雲系?)

    中社の杉の大木

    奥社の参道、片道約2キロ

 きょうはこれから大急ぎで、入笠まで行ってみる。

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    ’17年「冬ごもり」 (5)

2017年01月06日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 久し振りに北原のお師匠から電話がかかってきた。昨年の暮れに会って以来だが、2年前にいなくなった愛犬キクのこと、このブログのこと、そして入笠や法華道のことなどが話題となった。いつものことながら、師の記憶の正確さには驚かされる。また、齢(よわい)86歳を数えるという師が、この怪しいブログを、自らPCを操作して毎日読んでくれているのだ。4月になったら、入笠に行って「暴れたい」とも。一昨年に病気をしたときは心配したが、今ではほぼ回復し、確かにこの分ならそれも可能になるだろう。楽しみだ。
 
 やはり師は、苦労して復活させ、20年以上もの長きに亘ってひとりで維持してきた古道・法華道のことが今も気になるようで、それは当然過ぎる思いで、無理もない。行政の目が入笠よりも南アルプス・スーパー林道の方に向いていることに、「仕方ないと」言いながらも、何かとつい思ってしまうようなのだ。
 この点に関して弟子は、入笠の伊那側が、かならずしも通俗的な観光地になることを期待しているわけではない。観光も大事だが、そのために現在の美しい自然や、山気、星空までが汚され、毒されていいとは思わない。

 今年は、入笠が気に入って、法華道も含めもっと広い範囲を、もっと深く知るために歩いてみたいと思う人たちにも、来てほしい。増えてほしい。小黒川の美しい渓相を眺めながら歩くのもいいし、歴史とからむ高座岩から半対峠、さらにもっと鹿麗高原まで足を延ばすのも悪くはない。南アルプスの北端の山や谷を地図を頼りに彷徨へば、渓の奥では希少なヤマトイワナをまだ目にすることができるかもしれない。人の手の入らない、原始の森を歩くことも、ここからならできる。


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    ’17年「冬ごもり」 (4)

2017年01月05日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 年末年始を利用して、あちこちの山へ出掛けていった人たちはどうだったろう。山の事故は残念ながらゼロではなかったが、天候に味方された多くの人が、期待通りの冬山を満喫できたのではないだろうか。
 入笠も、雪こそ少なかったが、いつもの年と変わらず賑やかだったようだ。暮れに下りてしまってから風邪が抜けきれず、気にはなっていたが自重していた。例年だと1月は10日も行くようにしているが、今年は7,8,9日が3連休になるから、この間も併せて様子を見に上がりたい(あっ、7日は長野へ行くことになっているから、8,9,10日になるか)。
 何故10日にこだわるのかというと、もう5年も前、残留した牛の遺骸を発見して、トラックを呼んで下したのがこの日だったからだ。前年の10月に入って、牛は全頭が里に下りるはずだったにもかかわらず、2頭のホルスが残留を決めて逃げまくり、結局罠を仕掛けた末に捕獲したが、1頭はその際に骨折して残置と決定されてしまったのだ。
 折れた足を引きずりながら歩く姿を、何度か見に行った。暮れの25日には、秘かに餌も与えた。正月3日に行ったときは姿を確認できず、そして10日、雪の上に倒れ伏した牛を発見した。500キロ近くはあったはずの牛は、一人だけでも簡単に雪の斜面を引き摺り下ろすことができた。

 入笠でも、一度ドカッと雪が降れば、車では行けなくなる。そうなれば法華道を行くことになるのだが、今冬はそれがいつのことになるのやら。昨年は種平小屋夫妻と登ったが、他には雪の法華道を歩こうという人がいないのが不思議でゴザル。かんとさん、メールに返しました。ありがとう、お大事に。赤羽さんに、今年も多方面で燃えてもらいたいです。

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